第三部
□V-1.吟遊詩人の加わる件
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同じベッドに寝ていたという事態に気付くと、声にならない呻うめきをあげて、
ベッドから飛び出た。
急な動きに体がついていかず、へなへなと床に座り込む。
「……飲まれた」
不覚、とオオドリはうなだれる。
酒が残っているのか、だるい。
己とリューの着衣が昨夜のままなのを確認して、安堵する。
「…何の心配をしてるんだ。この体で…」
自分の杞憂きゆうに、嘲笑に近い笑みを浮かべた。
昨夜のことは途中からあまり覚えてないが、おそらく、
酔いつぶれたリューを部屋に運んで、そのまま自分もつぶれてしまった、と
いった具合だろう。
夜が明けきる前の、白い光がカーテンを透かして入ってくる。
夢の情景はもうない。
その影もおぼろで、どんな夢だったのかも危あやうい。
ただ。
(怖かった…)
恐怖感だけが残り、それを紛まぎらわすように、大きな体を少しだけ、丸めた。
*
「おっあよー、オオドリ君」
あくびをして、伸びをして。