第三部

□Episodion
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公園に設置された舞台の周りに人が集まっているところをみると、これから何か催し物があるらしい。

昼と夜を分かつ夕刻の鐘が鳴る。
それを合図に、舞台で音楽が鳴り、合唱と演劇が始まった。
遠くてよく分からないが、古めかしい衣装を来ているので、神代じんだいの伝説を演じるらしい。
豊穣にちなんだ物だろうか。
「近くで見るか?リュー」
オオドリの問いにリューは答えず、耳に手を添えて、何かを聴いていた。
いや、オオドリも同じように集中すれば、聴き取れた。
歌声。舞台とは別に、何かを歌っている者がいるのだ。
「たぶんあっち…なんだけど、いい?オオドリ君」
「かまわない」



 移動した二人は、公園の中でも特に木々の多い場所に、二人の吟遊詩人を見つけた。
その美しい歌に人々は座り込んで耳を傾けている。
美しいのは歌だけではなかった。
金髪の、整った顔立ちの若い男女。
ぼんやりと光る不思議な照明に照らされ、神秘的に見えた。

歌は、舞台のものと同じく神代にまつわるものらしいが、豊穣ではなく、世界の成り立ちについて歌っているらしい。
オオドリは、不思議な少年イータに聞かされた話を思い出しながら聴いた。
それでも、多くの客と同様、歌の内容より歌声と琴音のすばらしさに気を取られていた。
しかしリューは歌が、その内容が進むにつれて、泣き顔のようになる。

神々の諸事情。
半神の封印。
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