第ニ部

□U-1.鳥の歌
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なんだか巧い喩えは無いかと重要度のランキングで比較した。
「ごはんとケーキみたいな感じ?」
「……………どちらも精霊とは無縁ですが」
食べようと思えば食べられるが、違いが分からない。
「その心は?」
解説を求めたが、カイはニッと照れたように笑うだけだった。
グラフィアスはひっそりと仲間の精霊に訊いて回るが、同じく食事を必要としない仲間にも分からない。
ひとりだけ、心得たようにクスリと笑う気配があったが答を教えてはくれなかった。

「ねぇ、何か歌おうか?」

カイが話題を転じて、グラフィアスの瞳を覗く。
そこに、自分の姿は映うつらない。
懐かしい森の木影が形どる。
それなのに、グラフィアスはカイを視ている。
何度考えても、不思議だ。

精霊はカイのそんな疑問には気付かずに頷うなずくと、窓を示した。
「はいはい」
その意味を理解して、滑りが良いとは言えない窓を押し上げる。
ふわりと、艶つやのある香りが花をついた。
下を覗き込むと、蔓薔薇つるばらが壁を伝って伸びてきていた。
小さな光が、挨拶するように灯ともると、カイは笑みを深めた。
ほとんどの人が、彼らを見ない。
見えても、ほんの微かな光で、夜光虫やこうちゅうだと認識する。
自分だって、小さい頃は見えなかった。
どうして見えるようになったのか…きっかけは覚えているが、理由は未いまだに分からない。
それでも、出会えたことが嬉しい。
行く先々で声をかけて、笑ってくれる。ときには親切に助けてくれる。
どうも、なかでも木々や草花など、<森>に由来する存在が多いような気がする。
それは………。

カイはそっと、今の気分にあったバラードを夜へと放った。
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