第一部

□Ex.η 神の末子の望み
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母のドレスの影に。
賢き獣の洞に。
故郷から離れた都に。
国を渡り彷徨った。
僕から逃れることは不可能だとわかっていただろうに。
それでも。



 再会したとき、彼女は僕を責めた。
髪を振り乱して、泣きわめいた。
親が天寿を全うしても、変わらぬ姿で。
それは、僕の言葉で起きたこと。
呪った。
消し去りたかった。
神の法を。
神の末子であることを。
彼女を求めた言葉を。

それは、僕にも彼女にも不可能で。

代わりに僕を閉じこめた。
世界と隔たる氷の獄に。
僕にはほんの少しで
彼女には遙かな時間。

この感覚の違いも、彼女が畏れるものだと分かっても。

それでもまだ、願いは止まない。
求められたくて
求め方を間違えて
壊した、
それでも未だ、求めている。

昏い願いが、首をもたげる。
この神の身勝手な法が
彼女がいつか諦めるまで
ずっと 彼女を縛るよう。

不可触でも、彼女を失いたくはない。

囚われている。
心も、体も。

僕の牢獄。

僕の、リュー。


<END>


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