第一部

□Ex.ω 呪受者の事情
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騎士は、この婚約を嫌がりも喜びもしない。
その辺りが、姫君の胸をモヤモヤしたもので曇らせる。

「…何なのだ?」口を尖らせ始めた姫君に、騎士は、率直に尋ねる。
言葉を飾ることもない。

…相手のサインに気付く感性も磨かれていない気がする、と姫君は内心溜め息をついた。

だから、私が年頃になるまで、売れ残ったのだろうけど。光を紡いだような金の髪。
切れ長の綺麗な目。
怖い、と言う者もいるけれど。
自慢の幼なじみ。
密かに自慢の婚約者。

「アトリア?」
騎士は少し身をかがめ、姫君の目を覗き込んだ。
その鋭い眼差しに、ドキリとする。
けれど、何の他意もないことも知っている。
姫君は再び苦笑した。
「あのね、花が欲しいの」
「…花?」
オオドリは、姫君に抱えられた花を指差す。
「そうじゃなくて、虹色の花!
裏の森に今の時期だけ咲く花があるんですって」
「それは、初耳だ…」
オオドリの言葉にアトリアは身動ぎをした。
それで、アトリアの作り話か何かだと気付く。
微かに笑った。
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