番外編

□神々の諸事情
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「先に若様が着替え終わりました。王様、ゆっくりご対面下さいませ」
「はあ?」
「鼻に息を吹きかけると笑顔が見れますわ」
「あ?」
「まだ首が座っていらっしゃらないから、しっかり支えていて下さいね」
「ああ」
 魔王はいつの間にか子守をまかされた。
ソファに座り、女が出て来るのを待つ。宮女は湯浴みもさせているようで、ついたての向こうから湯気が来る。
「エー…タ…か」
宮女の言葉を思い出し、ふっと鼻に息を吹きかけてみた。一瞬笑顔のような表情になりはしたが…。
「嫌がってるんだろう、これは」
魔王の顔がほころぶ。
「王様」
 宮女がついたてを片付けた。着飾られた女が姿を現す。
「………さすがに、女を見る目はあるな、あの野郎」
長い沈黙の後、魔王は口を曲げて言った。
並び立つ美男美女に宮女たちは ほう と溜息をつく。
「王様、御前様に中を案内されてはいかがですか。若様は私どもが相手をしますので」
「あ?ああ。そうするか」
宮女に弟を預け、魔王は女の手を取った。
「中庭、屋上、オレの部屋、他。その都度宮女に案内させればいいから覚える必要はない。あんたの寝室は今、宮女が用意してるはずだ」
女は魔王の示す先を見るが、表情の変化はない。
「…あんたは、あの野郎の顔を見たのか?」
「アノ ヤロ?」
「あいつだよ!あんたを孕(はら)ませた男!」
女が首を傾げたまま、時間が経つ。
「人間がバカなのか? あんたがバカなのか?」
苛立った魔王は声を荒げた。女の頭をつかみ、記憶を覗く。
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