第四部

□誓い
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 ザニア城の聖堂よりも大きく、広く門を開かれた大神殿。
 多くの者に見守られ、戴冠式と婚礼が行なわれた。
数々の儀礼を経て、王と妃に冠が授けられる。
事前の教え通り、その内側には彼らの名前が浮かび上がる。
続いて婚姻の誓約が滞りなく行われた。
ユプシロンも、リューも、場の主役たるカイの存在感をかき消さぬよう、その役に徹して付き添う。
誓いの口付けに、祝福の声が上がった時、突然、白い風が吹き込んだ。
風は、新しき王の前に膝をつく。
「何用だ!」
衣装は異なれど、黒髪に赤いメッシュに鋭い風貌。
忘れようのない者に、新王(アシェス)は警戒し、妃(カイ)を背に隠す。
<…主(あるじ)は過日(かじつ)の非礼のために謹慎(きんしん)しており、代理として、謝罪と祝いの品を持参しました>
白い衣装に身を包んだシェリアクは頭(こうべ)を垂(た)れる。言葉遣(ことばつか)いも格段に丁寧だ。
<我が主(あるじ)は大神に背(そむ)く者ではなく、大神の祝福を受ける御身(おんみ)がこの品をお受け取りになっても、
何ら不都合は生じませぬ。どうぞ、お納め下さいますよう>
アシェスが返答する前に、シェリアクは包みを開き、妙(たえ)なる輝きを持つ二つの宝珠を示した。
感嘆が周囲から洩れる。
<その身に幸(さきわ)ひあれ>
祝福に合わせ、宝珠が二人の体に入り込む。驚きと途惑いで場内がざわめいた。
<これにて、以後、魔界の存在(もの)がお二人の治める地に災いなすことはございません>
顔を上げ、妃を見て かすかに表情をやわらげる。
<末長くお幸せに。お慶(よろこ)びを…>
そうしてシェリアクは、来たときと同様に忽然(こつぜん)と風のように去った。

 後をどうするのか。不測の事態にカイがハラハラしていた所、アシェスはその手を取り、正面を向いた。

「このザニアは、天と魔、精霊の祝福を得た国となった。
しかし私は、最も身近にある、我が愛しの民と、善き隣人の祝福を、心より願う」
手を掲げると、わっと歓声が起こり、アシェスとカイはパレードへと移行した。
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