第三部

□V-6.賢者にまみえる件
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何故、カイがシェリアク対応係になっているか。

アシェスは明らかに彼を敵視し、オオドリとリューは直接被害にあっている。
カイは彼の非道な行為の結果を眼にしても、直接の被害は何も被っていない。
そして、誰にも打ち明けられないが、シェリアクの歌をかなり気に入ってしまっているため、
負の感情だけを持ち続けられない。
一番穏やかな道行きにするために、自然とシェリアクと面々の間に入ることが増えたし、
オオドリは明らかにシェリアクを警戒して、道幅の都合で距離が近づいたときには、必ずリューとの間に
入ったり、抱き上げたりした。
(過保護な気もするけど、リューの誘拐の頻度を聴くと、杞憂と言いきれないものもあるよね)
アシェスも、本当はカイを近づけたくない。だが、自分で対応しては、どうしても怒りを抑えられない。
城への道など、知っているから、とシェリアクと別行動で進もうとしたが、妙な感覚に襲われて、何故か
見当違いの場所に出てしまうことが続いた。
<『楽しめるように』、仕掛けを用意した。>
訝しむアシェスに、シェリアクが淡々と告げた。
「楽しむ……っ!?」
怒りに自分を見失いそうになるアシェスを、カイがどうどうとなだめる。
訊けば、案内役であるシェリアクが同行することで、城への道が繋がるという。
「…………なんか、やたら凝った?」
街中を眺めて、うんざりと、眼を半眼にするリュー。
一緒に行くことを決意してしまえば、意味を失う仕掛けなのに。
<思いの外、ゆっくりとした旅程にしたようだからな。時間が有り余った>
カイやオオドリには全く見えないが、リューからシェリアクの視線は、時折同じ動きをする。
「…………もしかして。あーちゃんたちの乗った馬車に何か細工した?」
「あ、『誰かの陰謀』?」
そういえば、そのくらいしんどかったと言っていたことを、カイは思い出す。
<今頃、気付いたのか?>
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