第一部

□T-3 ケンカ腰に話す件
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「それより、早くしてよ。
オオドリ君待たせてるんだから」
べーっと舌を突き出した。
「おおどり。? あ、さっきの受呪者のろわれびとの兄さん。
・・・お嬢ちゃんのいいヒトかい?
どこで会ったのさ。
きっかけは? どっちから?」
「・・・今度は風に刻まれてみる?」
からかいに、キラキラした笑顔で返す。
本当にやりかねないと思ったのか、人狼は茶々をやめた。
「じゃ、ちょっと失礼」
リューを再び担ぐと、見事な速さで山頂へと駆け上がった。



 オオドリは、といえば、空をから山を見下ろしていた。
木々に阻まれて、中を移動する者を確認することは難しい。
旋回しながら徐々に高度を下げていく。
 どの山なのか、迷う事はなかった。
平地の中にぽつりと、存在していた。
頂上は削り落としたように平たい。
まるで、子供が砂を盛り上げ、さらに大きくするために
頂上の砂をなでつけたときのような感じだ。
しかも、そこだけ不自然に木が生えていない。

(まるで、原始的な祭壇だ)

聞かせる相手もいないので、頭の中で感想を述べる。
頂上に目を凝らすと、そこで、何かが動いていた。
うずくまるようにしながらも、時々身じろぎする者
祭壇らしき物を組み立てる、灰色の者・・人狼と、さらわれた女達に違いない。

「リューは?」
目を凝らしてみたが、あの鮮やかな赤を見つけられない。
・・・ベールでも、かぶらされているのか?

(しかし、何のためにこんな・・・)
生け贄、という言葉が浮かんだが、俗に生け贄と言われて連想する血みどろな光景はない。
どう見ても、ただ、集められているだけだ。

どうしたものか。

オオドリは頂上付近の、様子をうかがえる場所に降り立ち、思案した。
そのうちに、儀式を始めた人狼が、長く吠える。
それに他の人狼も合わせ、異様な振動となる。

世界が、震えた。

女達は悲鳴を上げ大地に伏せる。
急斜面にいたオオドリは転げ落ちないように木の幹に寄りかかったが、
運悪く、その木が根から倒れた。
揺れる大地を背に、空を仰ぐ。
大地だけではない、異様な気配がする。
(なん、だ?!)

ドンッ

最後に大きく縦揺れして、地震は収まった。

《これは、どういうことだ》
遙か上方から、不思議な声が響いた。
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