倉庫
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今日は世に言うバレンタインデーとやらです。
「随分と他人行儀だな。お前は何も用意して無いのかよ」
「いや、ちゃんと用意してあるけど別にあんなきらびやかなモノじゃないよ」
何となく朝一緒になってしまった土方君が下足入れを開けると、そこには綺麗に包装されたチョコレートが3つほどありました。
「うわっ、さっすが土方君。今年も勝ち組キープおめでとう」
「当然だ」
「うわっ、嫌味な台詞」
そんな他愛の無いことを話しながらそそくさと靴を入れて教室へ向かおうとした。
「おい、」
「何さ」
「お前は俺に渡すもんはねぇのか」
「……勝ち組が何を抜かしてんのさ。そんなに貰えれば十分でしょ」
「せっかくお前が安い金はたいてわざわざ俺のために時間削ったんだからな。貰ってやるよ」
「いやみなひとー」
と言いながらも、私は鞄の中をゴソゴソとかき回しチョコレートを漁る。
「何だ結局寄越すんじゃねぇか」
「まぁ勿体無いし、日頃お世話になってるし。はいこれ」
「……テメェ日頃の感謝の気持ちが装飾されてねぇ板チョコってどうなんだよ」
「何言ってんの土方君。このチョコの偉大さに気付かないなんて可哀想に」
「偉大なのは空しさだけだ」
「なんだよもー。とりあえず君にだけは渡そうと思ってたのにさ」
私がそう言うと、土方君はパシッとチョコを奪った。
「……素直じゃねぇの」
そう言い残し、私を置いてさっさと教室へ行ってしまった。
「どっちがさ」