作品展示場
□好きの再変換
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日曜日の昼下がり。
町の小さなバス停。
通勤ラッシュも学生の姦しい声もないこの時間帯はそれなりに心地良い。
約束の時間まであと十分。待つのが苦痛じゃないなんて初めてだった。
「おはよ」
「あ…おはよう…」
携帯も持っていないしひとりぼんやりしているしかない僕に対して、ただ歩いてくるだけで様になる藤くんに少しだけ羨望の気持ちが涌いた。
「暑くねぇの」
「そうでもないけど…いつもはこの上に白衣も着てるから」
黒のシャツとズボンと靴と鞄を訝しげに見られる。
藤くんは黒のTシャツに白い上着を羽織り、細身のジーンズがきれいな足を際立たせていた。
どこもかしこも対照的な自分たちを、お互いに笑った。