足立夢
□がっかりさせないで
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「大体なんで私に撃てなん………」
女の言葉はここで途切れる。
足立が、女に銃口を向けていた。安全装置は外され、引き金には人差し指がかけられている。いつでも発砲出来る状態だ。
「これで、どう?撃つ気になった?」
足立は喉を鳴らして笑う。
「早く撃ちな、って言ってるでしょ。早く撃ちなよ」
「なんで…なんで私に撃たせようとするんですか?」
「撃ったら答えてあげるよ」
「…撃ちません」
女は精一杯首を横に振る。
しかしそれも無駄骨で。
足立はにたーっと笑って女を見た。
「じゃあこうすればいいの?」
ぱん。
乾いた銃声が鳴り響く。
「痛っ…うぁっ…!」
足立の銃から発射された銃弾は、女の足に命中した。女の足からは赤い血が流れている。
白い柔肌から吹き出すように出る液体は、地面を赤く染めていった。
「っ……痛っ…」
女が傷口を押さえる。
痛いなどと言っていられるのもつかの間で、足立はまた女へと銃口を向けた。
無論、安全装置は外されている。
女も銃口を向け、安全装置を外す。
「お?撃つ気になったの?」
足立が声を弾ませ、嬉々として女の銃口を見つめる。
そんな足立に女は、
「撃ちませんよ、誰かさんと違って」
と言い放った。
女は、余裕があるのか、覚悟を決めたのか、はたまた痛みで感覚がおかしくなったのか分からない表情を見せていた。
「……余裕そうだね」
足立の笑顔が引き攣る。
「ちょっと、覚悟を決めただけです」
それだけです、と女は笑う。
足立の真似をして、喉を鳴らそうかと思ったが鳴らなかったらしく、肩だけが小刻みに揺れていた。
女は、撃たなかったり撃たれたり撃とうとしたり目まぐるしいなぁ、とか考えながら、一言。
「足立さん、私やっぱり撃ちません。いや、撃てません」
足立の笑顔がまた引き攣った。