足立夢
□テレビの中のあなた
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「今日は生憎、終日雨となりました」
感情の感じない無機質な声は今宵が雨だということを告げていた。
雨の日の夜中に映るマヨナカテレビ。
噂話なんか信じないけど探し物があるから。
だから見るのよ。
…そう自分に言い聞かせてテレビを消す。
時刻は間もなく零時だ。
「………!?」
真っ暗なテレビに写ったのは赤と黒が渦巻く世界で立ち尽くすあの人の後ろ姿。
片手には銃を持っている。
「足立…さん?」
テレビに呟けば振り向くあなた。
何かの間違いだと、夢だと思いたい。
でもそれも彼の言葉で消えていく。
「僕の事、好き?」
あぁ、そしてまた私は「嫌い」と答えてしまうのだろう。
テレビに写ったのはなぜ?
(マヨナカテレビは「見たい人」を写すもの)