ショート劇場
□一輪草
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「ん〜、さむいよ・・・。ほんだ、ふとん・・・」
瞼を閉じながら手探りで掛け布団を探し、俺の頬をペチペチと克哉が叩く。
「分かったから、叩くな。ほら、これでいいか?」
ベッドの上で抱きしめると、今度は暑いと宣う。
けれど素直に言い合う間柄になってから、お前は少しだけ悩みを俺に打ち明けてくれる。
些細な事から、深い所まで。
だが全て理解してくれと、お前は言わない。
「でも・・・、安心する」
ふぅと克哉が深い息を吐き出すと、穏やかな寝息に変わる。
「・・・。ありがとよ。安心してくれて」
でもな、克哉。これだけは理解していいか?
「愛してる」
お前が、俺を愛していると。
自惚れじゃなく、互いに愛し合い、これからの人生を二人で歩みたいと。
「ん・・・、オレも」
俺の背に手が回され、小さな返事が胸の所で返された。