ショート劇場
□その呼び名は特別
1ページ/5ページ
呼び名と言うのは、人それぞれに違う。
だから、その名で呼ばれると、特別な気持ちになる。
数ある名から、その名で呼ぶ意味。
朝一番に行う事は、煙草を吸う事。
害しかない煙草なのだが、習慣となったそれは、しないと落ち着かない気持ちにさせる。
「……くさい」
だから、開口一番ベッドの中から文句を言う《オレ》に対し、紫煙を吹き掛ければ、咳き込みながら涙目で睨まれる。
「何、するんだよ……」
お前が文句を言うからだと、いつもの返しを用意して、短くなる煙草を味わう。
「……。身体、壊しても知らないからな」
その時は、副流炎でお前も道ずれにしてやる。
有り難く思えまで付ければ、枕に顔を埋め、バカかと言われた。
煙を吸いたくなければ、自分から離れたらいい。
それをしない裸の背中を見て、まだ吸える煙草を硝子の灰皿に押し付ける。
一つ、背中にキスを落とせば、横目で様子を伺われ
「オレ、煙草の味、あんまりなんだけど……」
つまり、嫌いじゃない話を、言い訳がましく言われるのだ。