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□桜と共に散り逝く
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夜闇の中ひらり、ひらりと舞い散る桜。

風に吹かれて、何処に落ちるか分からない花びらをあっちに揺らしてこっちに揺らして


まるでこの世でいう・・・、人の命の様なもの。


まさか、こんな穏やかで、綺麗な死を迎えることが出来るなんて思わなかった。

腹の中に底が暗くなるほどの暗いものを買って
あらゆる恨み、悲しみ、憎しみを買ってきた自分が

今ここで、こんなに穏やかな死を・・・迎えていいのだろうか。

そう、真っ白に染まりかけている思考に自分で問いかけてみると、ふっと答えるかのように吹き抜ける、一陣の暖かい風。

『何言ってんだよ、佐助』

今はここにはいない筈の、愛しい愛しい彼の人の声がする。

「りゅ、のだんな・・・・?」

『今この場所で死ぬことを、悔やんでんのか?』

普段戦場で見るような、空のように透き通った軍羽織ではなく、
逢瀬で会う時の夜のような海のように深い深い蒼を身に纏った唯一無二の、この世で出来た大切な・・・人。

「くやんで、なんか・・・ない、よ?」

『・・・What?』

「なんで・・・、だっけそれ?ははは、だって・・・りゅうのだんなに、あう、ことができたから・・・」

この世で、血に染まった大地を見つめながら、愛おしい人に出会えたから。

「だから・・・、こうかい、なん、てしてない、よ・・・・」

『佐助・・・・』

「ね、りゅ、のだんな・・・、ほん、ものじゃなくて・・・、まぼろしになってでてきてくれるほど・・・、おれさまのこと、すき?」

伝えることも、伝われることも術を奪われた言葉を・・・どうしても、今ここで伝えたい、貴方の口から・・・それが聞きたい。

『・・・あぁ、好きだ』

「・・・・そっか、おれさま、も・・りゅ、のだんなのこと・・・すき、だよ・・?」

『佐助っ!』

あぁ、段々と意識が遠くなる。
目も霞んできて、もうそろそろ・・・お迎えが来そうだ。

「ね、りゅの、だんな・・・?」

『なん、だ・・・・?』

「も、し・・・また、あえたら・・・」


そのときはずっといっしょに・・・・


桜の花びらがひらひらひらひらと舞う中で、
愛しい人の温もりを感じながら、ゆっくりとゆっくりと俺は、汚くも、なんとも恵まれた人生に別れを、告げた。


【桜と共に散り逝く】




(あぁ、なんと甘美な死なのだろうか)

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