main story☆
□愛してる
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こいつはいつも突然だ。
突然現れ、突然言葉を発し、突然消える。
だからこれもいつもの突然の発言、そう思えばよかったんだ。
【愛してる】
「ねぇ、竜の旦那」
「・・・・・何だ、猿?」
さっきから大人しく俺の真正面で座って武田への返書を書く俺を待つ男・猿飛佐助。
じっと黙って俺の返書を書く手を見つめているかと思えばいきなりそいつが声をかけてきたせいで丁寧に書いていた字がちょっとだけずれた。
「俺様、猿じゃなくて猿飛・・・って、そうじゃなくて、ちょっと愛してるって10回ほど言ってみてくんない?」
「Ha・・・?んだよ、いきなり・・・」
「いいからいいから、いってみてよ」
「何で俺がんなこと言わなきゃいけないんだ」
また始まったのか、こいつの唐突な考えが。
いつもいつも振り回される俺の身にもなってみろと言い返してやりたい。
「だって竜の旦那に言って欲しっ・・・じゃなくてなんとなくだよ、なんなく」
「ふーん、まぁいいけど・・・・言えばいいんだよな?」
「うん、言ってみて」
こいつの言うことを無視すると後々煩い。
愚痴愚痴横で言うのは、小十郎だけで十分だ。
「Ah・・・、愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」
「俺様のことは?」
「愛してる」
って、俺は今・・・なんて言った?
ついつい、とんでもないことを口走ったような・・・・
「・・・・・ほんと?」
「なっ!?っ、てめぇ何言わせるかと思いきやそんなことかよっ!!!?」
「そんなことって、俺様にとっては滅茶苦茶大事なことなんですけどー」
「意味わかんねぇーよっ!好きでもねぇー奴にんなこと言わせんなっ!!」
こいつにそんな感情をこれっぽちも抱いていなかった筈なのに、何故か火照る俺の体。そしてばくばくばくとさっきから煩い心臓。
Shit,止まりやがれっ!と胸中で思うが一向に収まりそうにもない自分に腹がたつ。
「俺様は、竜の旦那のこと好きだよ?」
「んなわけねぇって・・・・は?」
今、なんつった?
「だから、俺様は竜の旦那のこと、好きなんだってば」
「っ・・・な、冗談はやめろっ・・・!」
「冗談なんかじゃないよ、俺様は初めて会った時から竜の旦那のことが好きだよ」
そう言って、にっこりと笑ういつもいつも、何考えてるかも分かんなくて、唐突で無神経な奴。
無性にそれに癪につくけど・・・、段々と真っ赤に染まっていく顔と、同様する心は忍という特殊な職業につくこいつには誤魔化しきれそうにない。
「ねぇ、竜の旦那、さっきのあれは・・・ほんと?嘘?」
どうやら・・・、認めたくはないが俺はこいつの突然の発言と罠に引っかかってしまったらしい。
「・・・・あ、あいっ・////」
「あい・・・・?」
「あ、I love you・・・・////」
「南蛮語・・・、それって愛してるって受け取ってもいいの?」
「っ・・・勝手にそう思ってろ////」
「・・・うん、勝手にそう思ってる」
顔が赤いのをなんとか隠そうと思ってそっぽを向く俺の体を何時の間にか側に来てすっぽりと抱きしめる自己完結男。
通称、猿飛佐助。
「ねぇ、竜の旦那・・・」
「・・・んだよ///」
「愛してるよ」
「・・・・うっせぇ////」
どうやら俺はこれから先も、こいつの唐突突然に振り回されるようだ。
(愛の表現も形も、人それぞれ)