BSR短編A

□拝啓、もう会えない貴方へ
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拝啓

自信家の臆病な愛しい人

雲隙(くもひま)から覗く陽光がいっそうと美しく、雨に打たれ、つやつやと匂う紫陽花が季節の風物詩となる時候にございます。
お元気でしょうか。
やはり、灰色の雲の隙間から覗く柔らかい白と黄の太陽の光はとても美しいです。なかなかお天道様の御光を仰げないことも重なって、目を細めないと直視は出来ないです。特に、私は。

朝餉はをさをさ食べておいででしょうか。
貴方は朝、ひとりでは起きれない方だから。
億劫、なんて、食べずに履物を履くのではないかと、皆、心配しておるのです。もちろん、私もですが。
貴方の言葉を借りて言うならば、「低血圧」はきっと気の持ちようです。
病は気から、と昔から伝わるように、思い込み次第では改善出来るのではないかと、よく侍医と話します。

さて。
先程申し上げたように、雨の季節となりました。

貴方のところは、今、何の花が咲いているのでしょう。

桜でしょうか。それとも向日葵?紅葉が美しいのか。それとも、春に向けて寒さに耐えている頃なのでしょうか。


今、貴方の隣にはどなたがいらっしゃるのでしょう。
きっとたくさんの方に懐かしく思われている貴方のことだから、たくさんの方に呼ばれていらっしゃるのでしょう。
をかしき方は罪ですね。

私が貴方の隣にいまそがれたことも、きっと貴方のところでは在りしこととなったかと思います。
(私はありつることのように思われますが)
本意を申し上げますと、なほ、憂きことです。
空風に吹かるるごとに、侘しく思います。

しかし私と貴方では、住む世の中が違いますれば、世の中になることも、さらぬことであったのかもしれませぬ。

品やら際やら、政略の多い時勢で、よそであるはずの貴方と恋仲になれた私はきっと、1番の幸運者でしょう。

離れて(かれて)おりましても、私は貴方を愛しております。例え二度と、廻り会うことが出来なくとも。
この想いは枯れることなく、私の心深みに沈み、保たれるでしょう。

貴方の御心を預かりましたから、私の心を貴方に預けましたから。
私は安堵して他の方とまみえます。怪しがられることなく。

会うこと叶わぬ身ならば、せめて、私の子孫だけでも、。

幾度六道を廻れども、貴方に会えぬなら、会えるまで、六道を廻りましょう。

再びお会い出来た時は、竹筒に戦国の星空を詰め込んで、貴方さまにみやとして差し上げましょう。

それでは、この辺りで失礼をば。
あらあらかしこ。

伊達政宗 殿

貴方に心を預けた女より



届かない届くことは一生ないと知りながら、彼女は白の鳩に手紙を託した。
飛び上がった鳩から羽が抜け、ふわふわと旋回しながら落ち、彼女の零れる涙を掬い上げた。



∴拝啓、もう会えない方へ


なんだか以前の書き方を思い出してきました。まだまだ文章表現は稚拙でわかりにくいけど、何となく勘は戻ってきたよ!
B/U/M/Pの最新アルバムの曲聞いてネガティブ思考回復させていたら、なんか執筆意欲湧きました。
これからも修行しなきゃねっ。

さて解説。
まず設定は、現代政宗が戦国ヒロインの元にトリップ。恋仲になってしばらくして、政宗は現代に帰還。会えない政宗に無理だと知りつつも手紙を書く。

文中の明らかにおかしい日本語は古語です。古文単語で表現してます。誤字誤法じゃないの。
興味や知りたい方は是非、調べてね。

ありつるは近い過去、在りしは遠い過去。なほはやはり、憂き侘しは辛い。
やがてを使いたいと思って書いていたら、いつの間にか終わってました。←


20110529.

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