デュラララ!!
□手取り足取り腰取り
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夏。
来神高校でも、夏の体育はプールになっている。
高校によっては、ノルマの距離を泳げるようにならないと補習がある……などと厳しい所もあるようだが、来神高校はただ泳ぐだけの授業だ。
「いやー。静雄は相変わらず体育では抜きん出た才能を発揮するね」
そのプールの授業中、感心した声をあげるのはビート板を手にした新羅である。
そんな新羅の声に反応してプールサイドに上がった静雄は、片手で髪をかきあげながら面倒そうに返す。
「つーか、普通だろ。お前が平均以下なだけだ」
「いや、スピードと持久力をあわせて見ると、水泳部にも劣らないじゃないか」
実際少し前にあったタイム測定で、静雄は水泳部のメンバーを上回る記録を叩き出した。
しかし、静雄はその事を誇るどころか煩わしい事と捉えているようだ。
「つか、新羅が泳げない方が不思議なんだが……中学でやらなかったのか?」
「ちゃんと泳げてるじゃないか!」
「あはははは!ビート板を使ってて、そこまで堂々としてるなんてね!!流石新羅だ!」
大爆笑しながら拍手をしたのは、見学のためにベンチに座っていた臨也だ。
日焼け対策なのか、暑い中であって長袖のジャージをしっかり着こんでいる。
そんな臨也が会話に入ってきた事で、静雄が額に青筋を立てるが、さすがに授業中である。いきなりキレる事はない。
「臨也君よぉ……サボってる手前が何言ってんだ」
「シズちゃん、サボりじゃなくて見学だよ。見学」
「あん?ぴんぴんしてんじゃねぇか。サボりだろ」
「やだなぁ……先生には許可をもらってるんだよ?ちゃんと見学だよ」
にやり。と笑った臨也の笑みは、体調不良による見学ではなさそうな黒さを帯びている。
(理由はわかんねぇが、こいつ、プールの授業に出られない。いや、出たくないのか?)
静雄がそう考えながら臨也を見つめていると、臨也は静雄の考えがわかっているのかいないのか、またにやりと笑った。
「なーに?シズちゃん、俺の水着姿に期待でもしてたの?」
「だあぁれが手前の水着なんて……」
静雄がついにキレようとした時、タイミングよく体育教師の集合の声をかかる。
「ちっ」
舌打ちをしながらも大人しくしたがい、列に並ぶ。
「あー今度のクラス対抗水泳リレーだが、タイムの速い順で5人でいいか?」
体育教師が言う水泳リレーは授業内で行われる、一人50Mで合計300Mを泳ぐ簡単な催しだ。
「アンカーは100Mだからなー平和島、いいか?」
「俺っすか?まぁ、いいですけど」
「あとの4人は……おっと、折原がまだ計ってなかったな。どうするか……」
タイムが書いてあるのだろう名簿をめくりながら教師が呟く。
そんな教師に、臨也はにこやかな笑顔で口を開き……
「せんせ「先生。こいつなら速いからメンバーに入れたらいいんじゃないっすか?」
「なっ……!?」
臨也のメンバー入りを助言する声で、辞退しようとしていた臨也の声が遮られる。
何より驚くべきは、その助言をしたのが静雄だったという事だろう。
「先生、俺は……」
「ん?そうか。じゃあ残り3人は門田と上杉、笹木でいいな?」
臨也が慌てて止めようとするも、体育教師は人の話を聞かないタイプらしい。
あれよあれよという間に臨也のメンバー入りは決定してしまったのだった。