詩
□あの頃の私と今の私
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“よく我慢したね”
先生のその言葉が大好きだった…小さい頃、いじめられっ子だった私をいつも励ましてくれた。
いつも泣いてばかりの私を優しく抱き締めてくれた。
そう……先生のその言葉が聞きたくて私はいつの間にか泣かなくなったんだった。
子供の頃、遊び相手がいなかった私にピアノを教えてくれたのも先生だった。
先生は生徒みんなの憧れであって、私の憧れでもあった。
先生のキラキラ輝いたあたたかい笑顔が見たくて一生懸命一生懸命練習した。
月日も流れて…いつの間にか私は人の前でステージを開けるようになったんだよ………。
観客席には居ないけど…きっと見てくれてるよね。
先生に一番聞かせたかった…貴方の一番大好きな曲――ショパン スケルツォ……。
この歓声…これは私ではなく、天国の貴方に届けられたものだよ。いじめられっこでグズだった一人の少女をここまで育てた貴方への拍手………。
今わたし…すごく涙が出そう。…すごく泣きたい…。
けど泣かないよ…。
泣かなかったら、きっと貴方は抱き締めてこう言ってくれるんでしょう?
“よく我慢したね”
ねぇ……………
お母さん。
end