小説【砂漠物語】

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「しっかしアレだな―。こんなにのんびり話しすんの随分と久しぶりな気がするわ」


べネットが大あくびをしながらベッドから顔を上げると、何やら難しそうな書物を読んでいるアラゴンが目に入りました。多分今までの付き合いから言ってこの時間帯に彼が読むのは哲学書でしょう。はっきり言ってそんなものを勉強して何が楽しいのか分からないのだが……。


「最近は休む暇ねぇ位刺客の数が多かったからな…まぁ明日になればまた命がけの日々に戻るだろうが………」



目は書物向いたまま返事をするアラゴンを暫く見つめ、今まで自分が思っていた疑問をぶつけてみようと思いました。最近はなかなか話をする機会がなかったのだから。

「なぁ……お前らって…何で命狙われてんだ?」



そう問うとアラゴンは一旦石化し、ゆっくりと顔を上げました。


「それが分かりゃあ苦労しねぇよ……」

「やっぱお前でも分からねぇのか…?哲学とか…あんま関係ねぇか…星占術とかやってんだから何か占えるんじゃねぇのか?」

ベネットのアラゴンに対する印象はまず天才だと言う事。初めて会った時から思ってました。彼は稀に見る努力家であり才能のある男です。哲学だか心理学だか星占術だか知りませんが自分にはさっぱり分からない異国の言葉でさえアラゴンには朝飯前なのですから。そんな彼だから分からない事はないに等しいと思っていたのに…。


「お前確か未来展開術も修得してたよなぁ?やらないのか?」

「馬鹿かお前…俺はあくまでかじってる程度だ。…素人があんな技使えっかよ」

充分スゲェと思うけどなぁ…アラゴンは自分では素人と言ってはいますが実際アラゴンの技はどれも一級技なのです。それを認めないのは計算なのか…それとも本当に自分の才能に気付いてないのか。


「じゃあ何で色んなモンに手ぇ出してんだよ」

「決まってんだろ」

一瞬アラゴンの強い眼差しがべネットの瞳を貫いた。

「――姫さまを護る為だ」
「っっ!!」

「姫さまを護るのが俺の使命だからな…」

始めて聞いた…アラゴンの自分の意思を…。

「ふっっだろうな」

ついつい笑いが込み上げてくる。いつだってコイツの頭の中にはジェラードしかねぇんだから…そんな俺を見て“何笑ってんだ”と怒鳴る。


「アラゴンべネットー!お風呂あがった!…って何してんの?」

話の話題の人物がいきなりドアの向こう側から現れるなんて思ってなかった2人は心臓が飛び出す程の衝撃を受けました。普段にないアラゴンの姿を見て何だこの人とジェラードに思われていた事をアラゴンは知りません。

知らない方が幸せな事もあると言う言葉がホントによく分かります。

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