小説【砂漠物語】

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部屋に入った後、アラゴンとベネットは嫌がるジェラードを無理矢理風呂に入るように促しジェラードが居なくなったのを確認するとアラゴンはベッド、ベネットは部屋に付いていた椅子に座り話を始めます。

『…おい、どう思った?』

『どうもこうもねぇぜ。多分その男は俺らを狙ってる刺客だろ?…だが何で俺らの名前を知ってるかっつー事だ。』


先程の少年の話にはいくつかひっかかる言葉が出てきました。まず自分達の名前を知ってると言う事―旅に出てからと言うもの何故だか多くの刺客に襲われる毎日を送ってきたのです。アラゴンの調べによるとフィレンツェ王国を闇に突き落とした“闇”と言うのは悪い魔法使いが作り出したものだと言う事実が発覚しました。もしその魔法使いが自分が滅ぼしたと思っていたフィレンツェ王国の生き残りが居ると…しかも その人物が国を救う為旅に出ていると言う事が割れれば刺客を送ってくる可能性も少なくないと言う事です。

ですが魔法使いと言え“水晶占い”を得意としない限り会った事もない人物の名前や未来を占うと言うのは難しい。ただでさえ“水晶”を持つ事が出来るのは魔法使いの中でも最上級者だけなのです。


『俺と姫さまが旅に出てから3ヶ月…お前ど出会ってからは約2ヶ月…刺客は数えきれねぇ程いたがこれから旅を続ける中、ずっとこんな生活を送っていたら身がもたねぇ………』

剣術使いの達人と言われる程の名手を父に持つべネットと、賢者を父に持ち将来は王佐になるであろうと国民に言われる程の文武両道派アラゴン。戦闘に関しては全く疎いジェラードを守りながら旅を続けるにはこの2人は充分に良い人材です。


ですがいくら素晴らしい剣術使いだろうといくら頭のキレる賢者だろうと生身の人間である事も確かです。…魔法使い…あるいは世界の大賢者と何らかの契約を交わさない限りこのような生活はかなり困難と思われます。なるべく早く“闇”の正体を暴きたいものだと思ってたのですが まさか今日、偶然立ち寄った街で可能性のある事実に出会すなんてべネットも、アラゴンすら考えなかったのです。
『…近いうちに…接触するかもしれねぇな…』


『あぁ、尚更ジェラードには知られない方が良いよな…俺らだけで事を運ぶか…』
『だからテメェ姫さまと呼べと何回も言ってんだろ!姫さまはテメェなんかが気安く名を呼べるような方じゃねぇんだ!姫さまのお心が広くなけりゃ今頃テメェの首はとんでるってんだよ!』


はいはい、とアラゴンの怒りを適当に受け流すべネット。アラゴンのジェラードに対する気持ちは少し…いやかなり度を越してる気もするが天才であり誰もが振り返る程の美青年であるアラゴンが一人の少女の事となれば周りを見失ってしまうと言う図は個人的に非常に面白いと思ってました。


『とにかく姫さまに何かあったら取り返しがつかねぇ!しっかり護衛するぞ!』

『おぅ!!!』

いや、どちらかと言えば過保護な保護者でしょうか…。


そのあとも、ジェラードはあそこが凄いだとか姫さまはここが素晴らしいなど2人の無駄な雑談が続いたのでした。本人が知ったら激怒ものですね。

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