小説【どっちBOSSケット】

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$$$第一限目$$$
《ドッチBOSSケット部》

「ふぅ〜良い汗かいたぁ」
高校受験の為、ここ1年くらいまともに身体を動かさなかったものだから余計に清々しい。学校を照らす日差しもきつくなく風も心地が良い。もう少しこの春独特の空気を満喫したいものだが、とりあえずは顔の汗だけでも落とそうとお手洗いに向かった。予め学園設計図と案内書全てを丸暗記しておいて良かったと心から思う。この東京ディズニーランドくらいの広さである学園内を迷わずに目的地に行けたのは奇跡だ。だが私は目的の場所まで来て扉の前で面食らってしまっていたのだ…。何故なら…


「………“お嬢様専用化粧室”…」

キラキラと宝石のような(まさか本物…じゃ…ないよね?)石があちこちに散りばめられた金色のプレートに美しい書体で書かれた言葉は庶民の私からしたら想像も出来ないような言葉であった。
なに?同じ高校生でも金持ちと庶民ってこんなに違いがあるものなのですか?へー始めて知りました。勉強になりましたねホント。心のノートにメモしておこう。
(ここまでくると“区別”ではなく単なる“差別”なのではないかと私は思う〜中川美緒〜)


「あら、美緒さん?お色直し室に入られるのではなくて?」

後ろから鈴のような凜とした声が聞こえてきた。この声は…
「沙織さんっ!」

振り返るとビーナスの女神も思わず微笑むであろう天使系美少女が立っていた。やはりお嬢様か。ってか“お色直し室”って……ここ学校だよね?

「あの、ここってトイレじゃないの?」
私が問いかけるとお嬢様はフフっと小さく笑われた。え?なに?私今何か変な事言った?言ってないよね?
「フフっ違うの。“お色直し室”って言うのは“御手洗い”と同じ意味よ。ここは確かにお手洗いだけど学園長は“お化粧室”ってしたかったようね。ただ私は化粧室って言う下品な言葉はあまり好まなくてお色直し室って呼んでるの」

は…はいっ!?今何と!?お嬢様今何と!?“お化粧室”がお下品ですか!?私なんて中学時代普通に“トイレ”とか“便所”とか言ってたよ!?

「か…金持ちどもめ…」

思わず口に出していた。
あぁお母さん、お父さん…私はこんな異空間で3年間無事に高校生活を送れるのでしょうか。

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