小説【どっちBOSSケット】

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同時刻。授業をサボっている生徒達が4人…学校のある一室の窓から美緒達1年B組がグラウンドでサッカーの試合をしているところを見下ろしていた。丁度今美緒が一人で活躍しゴールを決めたところだ。室内の一人が驚いた声をあげる。
「うおおぉっ!」
彼の名前は北寺院潤。日本では滅多に見られない地毛の金髪に青色の瞳。整った容姿はまるで王子のよう…だがコロコロ変わる彼の表情は悪戯な子供のようだった。はなっから勉強嫌いな彼は今日も授業をサボり仲間を集め、いつものたまり場でのんびりと午後のひとときを過ごしていた。ドラマは観つくした。漫画も台詞を覚えるくらい読みつくした。あきる程仲間とゲームをしつくした。―――はっきり言ってもう、しようとかしたいと思う事がない。暇すぎてどうしようかと窓から外を眺めていた時だった。下方から何やら応援や奇声が聞こえる。何事かと下を見やれば どうやら一年生がサッカーをしているらしかった。相変わらず体育の授業を受ける奴は少ないなと物思いにふけっていたところ、ボールと一緒にゴールに向かって全速力で走る少女が目に入ったのだ。先程から見ていると彼女のチームは点数一人勝ちで圧勝だった。しかもその点数はどうやら彼女一人でとってるようなのだ。
「うわわぁあ!」
彼女のあまりの凄さに奇声をあげずにはいられない。またも彼女がゴールを決めると思わず歓声が出た。あまりに自分が五月蝿かったのか後ろから仲間の声が聞こえる。

「ちょっと先輩、煩いよ」
「少しは落ち着いたらどうだ」
「先程から何がに興奮してるようですが窓の外に何かあるんですか?」

自分を先輩と呼ぶのは一年生の京極俊助。入学仕立てだと言うのに生意気な口調、男らしい筋肉質にこれまた派手な赤色の髪色。立っているだけで目立つ容姿をしている。
腰にくるような低いバリトンで話かけるは一つ年上の龍崎一城先輩。威圧感のある雰囲気に銀髪…(一城先輩の場合はイタリア人とのハーフだから。)そして敬語を使ってくるのは何故か同い年の壌雅崇。茶髪で茶色の目。この目立つ容姿ばかりのメンバーの中にある唯一の爽やか青年である。一見優しそうな好青年に見えるが怒らせるとこの面子でも敵わない程恐ろしい事は誰もが知っている。

「お前らちょっと こっち来いよ!スゲェ奴が居るぜ!」
嬉しそうに…ホントに嬉しそうに笑いかける。嫌々ながらも残りのメンバーは立ち上がり窓の外を見てみる。そこには男子生徒に紛れて一人だけ少女がいた…しかも男子よりも点数をかせいでいる。

「すっげ!何者だよアイツ!」 「なっな!スゲェだろ!」
「……ホントに女か?」
「何仰ってるんですか一城先輩。どっからどう見ても女のコでしょう。中川美緒さんですよ」

崇の最後の言葉に皆が一斉に振り向く。

「何で崇先輩知ってるんだよ!」
「あれ、俊助くん僕を誰だと思ってるんですか?」
「……無敵の壌雅崇先輩です」
「正解!僕に出来ない事なんてありませんよ〜」

「「「…………………」」」
語尾にハートマークがつきそうだ…。こうなれば誰も止められない。
情報収集が趣味だ。どこからどうやって調べて来るのかは誰にも分からない。半ば引きぎみだった潤だがすぐ立ち直る。

「おい崇!中川美緒は何組だ!?」
「1年B組総合出席番号26番、女子出席番号18番ですよ」

「おし出かした!京極お前は今からB組へ行って中川美緒を連れて来い!」
「りょーかいっ」
「おい潤…まさか女にやらせる気か?」
「さっすが一城先輩!その通りッスよ!俺らのボスは……」


潤は言いながら窓の外を見た。中川美緒がみんなに囲まれてニコリと笑っている。勝ったようだ。潤はその風景を眺めながらニヤリと笑い言った。

「中川美緒しか居ない!!!」

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