小説【どっちBOSSケット】

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昼休みの事だった。まだ入学して数日…いくら友達を作る気満々でもいきなり庶民の私が金持ち達に馴染めるのは時間の問題で…普通に話したり話しかけたりするのには慣れたけど、一緒に昼ご飯を食べたり一緒にお手洗いに行ったり出来る程の親しい友人はまだ出来ていなかった。今日の弁当の中身はハンバーグ!庶民の見方だ!おいしく食べ終わり弁当箱を片付けながら次の授業は何だったけっと考えてるうちに後ろから「美緒さん、次の授業は楽典とソルフェージュですわよ。続けて音楽史もありますからどちらも持ってお行きになれば?」と“お嬢さま”に声をかけられた。残念ながら私にはお嬢さま語なんてとてもじゃないが話す事なんて出来ない。うっとりする位の美しい天使の微笑みに返せるのが庶民営業スマイルで申し訳ない。

「あ、ありがとう!確か音楽室はD棟だったよね?」
「えぇ、ここから遠いですわよね。歩いて3分もかかるのですものせめて車で迎えに来て下されば良いのにね…」

は…はい!?今お嬢さま何と!?歩いて3分ってめちゃ近場じゃないでスか…?てか近いも何も学校内だし!!私なんて家からコンビニまで歩いて15分だよ!?てかてか車で迎え…って…いや止めとこ…ここは私が住むとことは別世界なんだ。

「美緒さん5限目の授業受けなさるんでしょう?宜しければ先生に私は保健室に行ってると伝えて下さらない?」

続けてお嬢さまが言った。でも見たところ具合が悪いとは思えない。でも仕方がないだろう。えー、と名前は確か…
「京極…さん?具合でも悪いの?大丈夫?」
するとお嬢さまはふんわりと微笑んだ。うわぁ、やっぱり美少女は何しても絵になるな。

「そうではないの。ふふっ沙織で良いわよ。美緒さんにはそう呼ばれたいわ」
「さ…沙織…さん…?」
「ありがとう。…具合は悪くないのだけれど ここからD棟まで歩くなんて貧血起こしそうで…だからお願い出来ない?」

え!?美少女…じゃなかった…金持ちはそんだけで貧血おこせちゃうのですか!?恐るべし金持ちワールド!!!
「わ、分かった。あの、私で良ければ授業ノートとっておくけれど?」
「まぁ!良いんですの!?」

勿論!と口から出かかる前にチャイムが鳴った。生まれてこのかた学校のチャイムはどこも“キーンコーンカーンコーン”だと思っていた。けれどここは違った!綺麗な鈴の音…“リーンゴーン”なのだっ!!
「わぁ授業始まっちゃう!ごめんまた後でね!」
「えぇ、お気をつけて」
お嬢さま…じゃなかった…京極…でもなかった沙織さんに手をふると私は急いで教室を出た。授業は私が予習をしてヤマを当てたところが全て命中したおかげで順調だった。

「次!〈問5〉の問題全てを説明も加えて!中川。」
「はい。1、まずFとHで増4度ですが♭がついてBとなっているので完全4度です。そこから考えて展開音程は完全5度となります。2番目の問題はまず動悸の部分が同じリズムで……」
何故音楽専門の学校でもないのにこんなに詳しく勉強しなければならないのか疑問だったのだがいざ勉強し出してみればハマるもので中々面白い。先生にも誉められ気分も上々だ。と言うも授業に参加していたのはたったの3名だった。42人中のだ。お坊ちゃんお嬢さんと言うのはそんなにか弱い生き物なのだろうか。

「えぇ−今日はサッカーをやる。番号順にグループになりキックの練習からやる」
サッカーの時間になっても集まったのは男子生徒だけだった。これでも集まったのはたったの15人だ。女生徒は私ただ一人…。

「中川さん…だよな?俺らと組まねぇか?」
まぁどちらにせよ2グループくらいしか出来ないんだからどちらでも良いんだけどね。

自分で言うのも何だが、試合が始まってからも私は大活躍しっぱなしだった。パス・キック・シュート…全て完璧!決まった!男…じゃなかった、女!中川美緒ここに在り!!!!

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