そのた

□スキンシップじゃなくてセクハラです
1ページ/2ページ




「やっべぇ帰ったらアッシュに殺される……!!」



オレは帰ってきた古典の答案用紙を見て愕然としていた。

用紙には、ばってんばかりついている。



「こんな点数……とったことなかったのに」



はあぁあああ、と大きなため息をつき、テストを自分の鞄の底へと無理やり詰め込む。


隣の席の親友のガイはテストの点数が良かったらしいから、にこにこしてる。

聞いてみたら98点だったらしい。

……オレの点数とお願いだから交換してくれよ、って言っても無理な話だろう。


ふと黒板を見てみると、大嫌いな古典の先生がオレを見て薄らと微笑を浮かべている。

……はん!オレの点数を見て笑ってんのかよっ!!あの陰険眼鏡っ!

ムカつく、なんて思ってたら陰険眼鏡が口を開いた。



「ファブレ君は、今日居残りです」



はい?

今、オレの名前が出た気がしたけど…気のせいだよな?

そう自分で解釈して、机に突っ伏せる。



「聞いてますか?ファブレ君?」



古典教諭――カーティス先生は、オレの目を見ながら笑みを深くする。

コ・イ・ツ…!やっぱりオレを馬鹿にしてやがる……っ!!


慌てて体を起して反論を仕掛けた。



「なんでオレだけ居残りなんだよ?!」

「だって……ねぇ?ファブレ君の点数、じゅうななて――」

「だあぁあああ!わーったからそれ以上言うな!!」



クラスメイトたちが一斉に笑いだす。

なんだよ、どーせオレは17点ですよ!赤点ですよ!


つーか、こんな意味不明な教科で点数とれる方がおかしいんだっつーの!



「では放課後、図書室にちゃんと来てくださいね?」

「…行けばいいんだろ」

「えぇ、約束しましたよ?ファブレ君」



含み笑いを浮かべてる陰険眼鏡をオレは思いっきり睨んで、すぐ古典の授業は寝てやった。



なんでオレが放課後に残らなきゃいけねーんだよ!

しかも嫌いな先生と二人きりで居残り?

冗談じゃねぇっつーの!






「いらっしゃい。さあ、ファブレ君、おいで?」



放課後、律義に約束を守って来てやったっていうのに……この先生の態度は酷かった。

オレが来たってわかったとたん、ドアに向かって超笑顔になりやがった……!!

正直、マジでキモい。


つーか、おいでって……妖しい笑みを浮かべてる人のところに行きたくなんかねぇ…!



「ファブレ君、どうしたのです?」



お願いだからニヤニヤしてこっち見んな!

二人っきりで一緒になりたくなかったのに……!

図書室にオレと先生しかいねぇってどーゆーことだよっ!!



「オレ、用があるのでもう帰ってもいいですか?」



とりあえず、ここはこの変態から逃げるべきだ。

そう考えて、距離をとりつつ愛想笑いを浮かべた。



「……そう、ですか」



この後の先生と言ったら、マジで酷かった。

部屋の隅っこで体育座りをして――嗚呼、これ以上気持ち悪い人なんているのでしょうか?

この変態は先生という自覚があるのでしょうか?


オレはもう先生の醜態を見たくなかった(気持ち悪い)から、慌ててフォローをかけた。



「あ、あぁ!そういえば今日はまだ大丈夫な日だからまだ残れ――」

「本当ですか?では早速あなたと私の愛の補習を始めましょうねぇ」



オレの言葉に気を良くした先生が再びニヤニヤし始める。

なんかもう突っ込みどころが多すぎるし、ほんとこの人、救いようなねぇ……!

愛の補習、ってなんだよ?






「…ルーク」

「は、い?!」



あれから一応は勉強し始めて、なぜか今オレは危機的状態に陥っている。

すす、といつの間にか近付かれていて、オレの両手と顎を掴まれている。


…そんな状態なのに、すらりと伸びた指がきれいだとか、先生の顔って整ってるな、とか……

ほんと、ありえねー。



「ルーク」



掠れ声でオレの名前を呼ぶなって!

しかも呼び捨てって…!!



「やばい。可愛い。ねぇ、もう私、我慢できないです!!キス、してもいいですか?いや、もうしちゃいますよ?」

「……は?え、ちょっとやめ――んっ」



先生の顔が近付いてきて、唇にやわらかいものが触れた。

ちゅ、と音を立ててお互いの唇が離れてく。


先生の顔はそれはもう――凄く嬉しそうな笑みを浮かべていた。



「お…オレから離れやがれっこの変態教師!!」



オレに抱きついて離れようとしない先生を蹴り上げて、距離をとり素早く図書室から出る。


いきなり抱きつかれて、キスされて……!

初めてだったのに!!なんて言っても、この事実は消せない。


はあぁああああ、ほんとに泣いてもいいですか?






スキンシップじゃなくてセクハラです
(テスト帰ってきたんだってな?)
(げ、アッシュ……古典17点とか死んでも言えねぇ…)
(17点、だと?!こんの屑があぁああ!!)
(おわあぁあっ痛ぇっつーの!!)


ルークの災難は続く……!





→あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ