虚無

□指揮隊長
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1か月後。水の月。

あれからもう一度魔導院に行ったけれど、クラサメ隊長には会わなかった。

だから、今日の解放作戦で聞いた声は1か月ぶりのものだった。


「クラサメ隊長、か」


隊長からのCOMMが切れた後、セブンがそうつぶやいた。


「わたし、この前マザーと魔導院に行ったときクラサメ隊長と会ったよ!」

「そうなのか?私も行ったが会わなかったな」

「ジャックは?」


COMMで遊んでいたジャックに声をかけた。


「ん〜、僕も会ってないよ〜?一緒に行ったのにね〜」

「ジャックがトイレに行ってる間に会ったの」

「なるほど〜。どんな人だった?やさしそう?」

「んー…なんか、堅そうな人。

…でも、なんか、懐かしい感じがした」

「懐かしい感じ?前にも会ったことがあるのか?」

「うーん、それはないと思うんだけど…

だけどね、なんか、落ち着くの。マザーに似てるような、みんなに似てるような

だけどちがう、なんか、不思議な感じで…わたしは」

《アルファ》


わたしの話を遮ったのは、COMMのトレイだった。


「どうしたの?」

《そこにいる誰かのCOMMがオンになったままですよ。今の会話、すべてみんなに聞こえています》

「………ええ!?」

「あ、僕だ。」

「ジャックーーーーー!!」

「…だから遊ぶなといったんだ」

《だせーなアルファ。全部本人に聞こえてたぞきっと》


落ち着く?なんだそれ!と、サイスが馬鹿にしたように笑った。


全部本人に…


考えれば考えるほど恥ずかしくなって、真っ赤になったわたしに


「薔薇色のキャンパスライフのはじまり〜?」


と言ってきたジャックを、思いっきり殴ってやった。


「隊長も、聞こえてたんならなんか言ってほしいよね〜」

「やだよ!もう、ジャック許さないからね!ポーション全部没収してやる」

「え〜!返してよアルファ〜!ごめんってば〜!」



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