Novel
□25000HITキリリク
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タッグデュエルは、パートナーとのコンビネーションが重要になる。
だが、これはフェアなタッグデュエルではの話だ。
デュエルアカデミアでは、突如ルールが変わってしまう場合も、少なからずあるらしい。
『バトルロワイヤル』
デュエルアカデミアで用いられるデュエルは、主に一対一のデュエル方式。
あまりタッグデュエルをすることはなかった。
デュエリストである限り、一日一回は自由にデュエルをしたくなるものだ。
「ねぇ、バトルロワイヤル方式でデュエルしない?」
今はお昼休み。
レッド寮の前でいつものメンバーが勢揃いしていた。
翔は、折角メンバーが集まっているからと、皆にデュエルを持ちかけた。
「バトルロワイヤル方式?それって、どんなルールだ?」
デュエルにいち早く反応した十代は、聞いたことのないルールに興味津々と、翔に聞いてきた。
「バトルロワイヤル方式は、単純に自分のターンならどの相手にでも攻撃して良いサバイバルルールだ。他の奴をサポートしても良し、協力してデュエルしても良し、何でも有りのようなルールだな」
万丈目が、十代でも分かるように簡単に説明をすると、十代は目を輝かせてデュエルディスクを着けた。
「そんな面白いルールがあんのかよー!だったら早速やろうぜ!俺は準備出来てる!」
楽しそうな十代の声を合図に、三沢も翔もデュエルディスクを着けた。
「十代やる気だな、今日こそは勝たせて貰うぞ」
「僕も、今日はアニキに負けないからね!」
意気揚々に準備を始める三人に、明日香がある疑問を投げかけた。
「ライフポイントはどうするの?五人でのバトルロワイヤル、流石に4000じゃあ簡単に決着着くわよ?」
「なら、ライフは8000で良いだろう。俺たちなら、4000でも多いとは思うがな」
万丈目の自信のある言葉に、周囲のメンバーも頷いた。
ここにいるメンバーは、全員相当な実力のあるデュエリスト。そう簡単にライフは削られないだろう。
ライフが多いほど、その分時間も掛かってしまう事が目に見えている。
その点では、十代達には4000でも多い方だった。
ライフポイント8000で同意のようで、全員が自分の位置についた。
「「デュエル!!」」
デュエルが始まって数分、既にデュエルは熱い展開を迎えていた。
「行くぞ、バトルフェイズ!!十代のモンスターに攻撃を行う!」
「うっわ、やっべぇ!」
三沢の攻撃宣言。十代の場にはモンスターが一体、伏せカードは無し。この攻撃を受ければ、十代のモンスターは破壊されライフも削られてしまう。そして、場はがら空きに。
だが、三沢のモンスターの攻撃が通ることは無かった。
明日香が瞬時に反応し、伏せていたカードを発動した。
「トラップ発動!!三沢君の攻撃は、無効にさせてもらうわよ!」
明日香が発動したトラップの効果で、十代への攻撃は無効となった。
危うくピンチに陥るところだった十代は、ほっと胸を撫で下ろした。
「サンキュー明日香!助かったー!」
「何言ってるのよ、女は女の味方よ?」
「本当、明日香は頼りになるなー!」
見事な明日香のサポートに、心強いと喜ぶ十代。
その光景に、面白くなさそうに不機嫌にするデュエリスト三人の姿があった。
少々悔しいのか、翔が不機嫌そうな声でターンを促す。
「三沢君、もうターンエンドでしょ?早くエンド宣言してよ」
「……あぁ、ターンエンドだ」
三沢も機嫌が優れないのか、面白くなさそうにエンド宣言をする始末。
エンド宣言をしたことで、万丈目へターンが廻って来た。
「俺のターン、ドロー!バトルフェイズ、光と闇の竜で三沢のモンスターを攻撃!」
「くっ……!!破壊されたか…っ」
「フン、カードを一枚伏せてターンエンド。十代!貴様の分は代わりに返してやった」
「おっ!ありがとな、万丈目ー!」
さきほど、三沢が十代を攻撃したという事で、代わりにお返しをしたという万丈目。
十代の嬉しそうな顔を見る限り、そのために三沢を攻撃したのだろう。周囲のメンバーには手を取るように分かっているようだ。
万丈目も万丈目で、十代に頼りにされたかったようだ。
「……僕のターン!!僕は万丈目君のモンスターに攻撃するよ!!速効魔法『収縮』発動!」
「甘い!俺はモンスター効果を発動する!攻撃力を下げて、その魔法効果を無効にする!」
「甘いのは君の方だよ!更に速効魔法発動『リミッター解除』!」
「チッ、これ以上無効にしても、今の攻撃力ではどちらにしろ破壊される…っ」
嫉妬の渦巻く翔の攻撃は、万丈目さえも回避できないようで、万丈目のモンスターは翔によって破壊されてしまった。
翔の嫉妬で万丈目のモンスターが破壊されたことで、少なからずも明日香と三沢は同情したが、それもすぐに無駄なものとなった。
「悪いな、翔!トラップ発動!このターンに破壊されたモンスターを復活させるぜ!」
まさかの十代のサポートによって、破壊した万丈目のモンスターは、再び場に復活する形となってしまった。
万丈目も流石に驚いたようで、唖然とした顔で十代を見る。
「万丈目!さっきの借りは返させてもらったぜ!」
満面な笑みで答える十代に、更に翔は面白くなさそうにイライラしている。
だが、それは明日香も三沢も同じようで、十代にサポートされた万丈目を恨めしそうに睨んでいる。
そんな視線は、今の万丈目には届かないようで、十代の笑顔に釣られて頬が緩んでいた。
「まさか、十代に借りを返されるとはな」
「ひっでぇなぁー、俺だって万丈目をサポートすることぐらい出来るんだぜ?」
仲睦まじいその光景に、他の三人は耐えられるはずもなく。
十代に夢中になってる万丈目には、何かがキレる音は聞こえなかった。
「おーい……お前らちゃんとデュエルしろよー…」
数十分後、そこには呆れたように言葉を洩らす十代の姿があった。
だが、バトルロワイヤル方式でデュエルしているにも関わらず、十代はデュエルをしているようには見えない。
十代の目の前に広がる光景は、自分以外の四人がまさに息もつかせぬ白熱したデュエルが繰り広げられていた。
「万丈目君はアニキをよく思ってなかったんじゃないの!?」
「誰がいつそんなことを言った!!」
「三沢君、十代は貴方には勿体ないわ。私に勝ってから出直して来なさいッ」
「なら、今ここで明日香君に勝たせて貰うよ!」
一人一人が十代の取り合いをしている。
天然で鈍感な十代には、四人が何故自分以外とデュエルを繰り広げているのか理解できず、一人寂しくその光景を見守っていた。
そのデュエルは、教師が止めに入るまで続いたようで、教師が騒動を聞きつけた時には、学園で上位に入るデュエリスト四人が見本のような熱いデュエルが行われ、その横で一人つまらなそうにデッキ構築をしている十代の姿があったという。
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あとがき⇒