小ネタ
□私だけの秘密
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ガレージにある椅子に一人腰掛けて、本を読んでいる。
ガレージの住人は、今は誰もいない。
クロウはいつものように配達へ。ジャックはカーリーに手伝いを頼まれ外出中。そして遊星も修理を頼まれ出掛けている。
私は所謂、留守番。
丁度、遊星に勉強を教わっていた。その時、修理の依頼が来た。
最初、私が来ていたせいか、依頼を受けようか悩んでいたようだ。だが、折角の依頼。私は遊星に依頼を受けるよう言い、留守番を買って出た。
読みかけの本も読み終わり、お茶を口に含み、息をつく。
さて何をしようか。本も読み終えてしまったし。
そういえば、鞄に雑誌が入っていたはずだ。
あんまり細かい部分は読んでいなかったので、今の内に読んでしまおうか。
そう考え、雑誌を取り出した。
私は、ペンを片手に雑誌を凝視している。
雑誌の最後によくあるおまけのようなページ。
そのページにはこう書かれていた。
『貴方の気になる人の良いところ、いくつ書きだせる?』
その文字が目に止まり、今真剣に考え込んでいる私がいる。
気になる…人ね…。
……って、何で遊星が出てくるのよ!
確かに、遊星にはお世話になったけど…っ。
もう深いこと考えずに、暇つぶしに答えちゃおうかしら…。
遊星の良いところ…。
優しい、冷静沈着、温厚、寛大、礼儀正しい。
考えると結構キリがないわね。
仲間思いで責任感があって、何があっても怒らない、子供の面倒見も良い…人に対する誠意もある…。
むしろ、このページの空欄が足りるかしら…?
デュエルも強い、喧嘩も強い…これは良いところなのかしら?
頭が良い、ホイーラーとしての技術力もある、教えるのも上手い…あ、料理も得意よね。家事も出来るし、几帳面。
あぁ、空欄に収まりきらなくなっちゃった。
空いてる部分に書こうかしら。
考えも大人だし、素直で正直者、常識もあるし、意外に目上の人への社交性もある。
こうして考えると、逆に遊星の短所が出ないわ…。
他にはー…あ、たまに見せる穏やかな顔とか笑顔とか…、Dホイールを調整してる時の真剣な顔…それから…
あ、手袋を口を使って脱ぐ仕草とか……、マニアックかしら?
でもやっぱり一番は…
「アキ?」
「きゃあッ!?」
突然肩を叩かれ、びっくりして叫んでしまった。
慌てて後ろを向くと、遊星がいつの間にか立っていた。
「ど…どうかしたのか…?」
「い、いえ…別に…おかえりなさい…」
あまりにもびっくりして、心臓がバクバクいっている。
遊星も、私の声に驚いたのか、一歩引いて、言葉が詰まってしまっている。
「あの…いつからそこに?」
「え…あぁ、1分前ぐらいか?一応、声は掛けたんだが集中していたみたいで気づかなくてな。
だから肩を叩いたんだが…不味かったか?」
……1分前、ですって?
「な、何か聞いた?!」
「へ?いや、何もっ」
「そ、そう…良かった…」
「……?」
どうやら、ブツブツ言っていた私の言葉は聞こえていなかったようだ。
慌てて参考書などで隠した雑誌に目を向ける。
あの文章が見られていたら、確実に死んでいたわ。
「よく分からないが…、少しお茶にしないか?
依頼主からお礼にと、クッキーと紅茶をいただいてな」
「え、えぇ…いただくわ」
「それじゃあ、淹れてくる」
台所へ引っ込むのを見計らって、雑誌の一番下に、小さく回答を書いた。
「遊星、私も手伝うわ」
「そうか?すまない」
「いいのよ」
最後は私だけの秘密。
―― 一番好きなのは
――私を受け入れてくれたこと
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