加地×日野小説

□恋人同士
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これでは顔を逸らすとか言っている場合ではない。

身じろぐ事も出来ず、香穂子は加地にドアへと押し付けられているような体勢となっていた。

そして香穂子の鼓動は勝手に加速していき、顔も全ての体温が集まっているのではないかと思う程熱くなっていく。


赤く染まる顔を見られたくないと思っていても加地を見上げる香穂子の顔は動かす事が出来ない。

こんな密着状態にあたふたしているのは香穂子ばかりで加地は至っていつも通りだった。
いつも通り、香穂子を想って優しく微笑えんでいる。
その笑みが甘さを含んでいて、なおさら香穂子の照れ具合に追いうちをかける。

付き合い始めてまだ数ヶ月しか経っていないが、こんなにも至近距離に相手を感じるのは初めての事で香穂子のキャパシティを軽く越えてしまっている。

どうすればいいのか(といってもこんな状況では何も出来ないのだが)考えようとしても目の前の加地の顔を見ながらでは全く考えに集中できない。


ガタン!

その時、また電車が大きく揺れた。
中の乗客が香穂子のいる側へ一斉に流される。

加地が耐えているものの多少の圧迫が香穂子にかかる。
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