加地×日野小説

□恋人同士
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だけどさすがにそれも5回目となればその笑顔も苦笑へと変わる。

「平気だって言ってるでしょう?私だってはしゃいじゃったんだから。」

香穂子は自らも5回目となるセリフを目の前の加地に言う。

「優しいね、香穂さんは。」
「っ…!」

加地のとびきり甘い笑顔と声に香穂子の顔が赤くなる。

遊園地から5回も繰り返されているこのやり取りは毎回加地の「必殺スマイル」によって終了する。

加地と付き合い始めて
―というより出会ってからずっと―
この笑顔を幾度となく見ているハズなのに一向に慣れる事がない。
いや、付き合い始めてからはパワーアップしている気さえする。
慣れる日なんて二度と来ないような確信めいた予感が香穂子にはあった。

「もう…」

熱くなった頬を手で押さえつつ、香穂子は目の前の恋人を改めて観察する。

普通科だけでなく音楽科にもファンクラブが存在しているという噂がある位、加地の人気は高い。

そんな圧倒的な女子人気を持つ人が転校してきてからずっと、私を「憧れ」だと称し、去年のクリスマスコンサートの後には私を「好き」だと言ってくれた。
香穂子はその事が今でも全く信じられない。
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