リクエスト
□私を離さないで
2ページ/6ページ
「土浦君…どうしてここにいるの…?」
自分でも驚くくらい低い声音だった。
でも私を見た土浦君はもっと驚いていた。
そして、その隣にいる女の子も。
「香穂!?お前、どうしてここに…」
「聞いてるのは私の方だよ、土浦君?…どうしてここにいるの?隣にいる子は…誰?」
自分でも嫌な言い方をしてる自覚があった。
でも言葉が止める事が出来なかった。
感情が体の中をめちゃくちゃに駆け回って、頭の中が白く弾けて、自分がどうなっているのかもわからなくなりそうだった。
「これが『嫉妬』っていうものなのかな」
そんな事をどこか遠くでぼんやりと思ったりもして…本当に自分が何をして何を思ってるのかもわからなかった。
「答えて」
それでも口からは勝手に言葉が出ていく。
「これにはちゃんと事情があるんだ。だから聞いてくれ、香穂。」
「あ、あの…日野先輩!私はただ…」
あぁ、この子は1年生の子なんだ。
彼女が言った「先輩」という言葉で初めて気付いた。
それにしても本当に可愛い子。
冬海ちゃんとはまた違う女の子らしくて可愛い感じ。
私にはない可愛さ。
やっぱり…土浦君だってそういう子の方がいいよね。
私みたいな子が彼女よりもこういう子の方がいいに決まってる。
そう思ったら、目から涙が溢れそうになって、慌てて下を向く。
気付かれないようにしたつもりだったのに…
「香穂…?お前……」
その声で気付かれてしまったことを悟る。
悔しくて、悲しくて、並んでいる2人がどんどんお似合いに見えてきて…私はその場から逃げ出した。
怖かった。
2人の口からどんな言葉が出てくるのかが…たまらなく怖くなった。