リクエスト

□私を離さないで
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「土浦君…どうしてここにいるの…?」


自分でも驚くくらい低い声音だった。

でも私を見た土浦君はもっと驚いていた。

そして、その隣にいる女の子も。


「香穂!?お前、どうしてここに…」


「聞いてるのは私の方だよ、土浦君?…どうしてここにいるの?隣にいる子は…誰?」


自分でも嫌な言い方をしてる自覚があった。

でも言葉が止める事が出来なかった。

感情が体の中をめちゃくちゃに駆け回って、頭の中が白く弾けて、自分がどうなっているのかもわからなくなりそうだった。


「これが『嫉妬』っていうものなのかな」


そんな事をどこか遠くでぼんやりと思ったりもして…本当に自分が何をして何を思ってるのかもわからなかった。


「答えて」


それでも口からは勝手に言葉が出ていく。


「これにはちゃんと事情があるんだ。だから聞いてくれ、香穂。」

「あ、あの…日野先輩!私はただ…」


あぁ、この子は1年生の子なんだ。
彼女が言った「先輩」という言葉で初めて気付いた。

それにしても本当に可愛い子。
冬海ちゃんとはまた違う女の子らしくて可愛い感じ。
私にはない可愛さ。

やっぱり…土浦君だってそういう子の方がいいよね。
私みたいな子が彼女よりもこういう子の方がいいに決まってる。

そう思ったら、目から涙が溢れそうになって、慌てて下を向く。

気付かれないようにしたつもりだったのに…


「香穂…?お前……」


その声で気付かれてしまったことを悟る。

悔しくて、悲しくて、並んでいる2人がどんどんお似合いに見えてきて…私はその場から逃げ出した。


怖かった。
2人の口からどんな言葉が出てくるのかが…たまらなく怖くなった。
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