リクエスト
□二人の帰り道
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学校からの帰り道。
練習が終わって、土浦君にメールして、一緒に帰る。
それが――毎日になったこの冬。
学校の分割案とかアンサンブルコンサートとか…色々あったけど、私の中では『土浦君と両想い』になれた事が一番嬉しい事かもしれない。
「何考えてるんだ?顔、ニヤけてるぞ。」
隣を歩く土浦君が笑っている。
「え、嘘!?」
言われて私は顔を手で抑える。
「そんなんで嘘ついてどうするんだよ。ほら、この辺りが…」
そう言って私の頬を軽くつつく。
「やめてよ〜、つっつくの…」
「あはは。悪い悪い。…で?何考えてたんだ?」
口で言うほど悪びれた様子のない笑みを浮かべながら、最初の質問を繰り返された。
…答えづらい。
でも本当に思った事だから、正直に言う事にする。
それに変にごまかしたって追求が深くなるだけで結局逃げられないのもわかっているから。
「…あのね、こうやって土浦君と一緒にいられて嬉しいな〜って……あはは。」
だけど、さすがに恥ずかしかったから、最後は笑ってごまかしてしまった。
そんな私を一瞬驚いた顔で見ていた土浦君だったけど、すぐに私の大好きな笑顔を見せてくれた。
「あぁ、俺もだ。お前とこうしていられるのが当たり前の事になって、嬉しいよ。」
そう言った後で、
「って、何言わせるんだよ。…恥ずかしいだろ。」
照れた顔で頬をかく仕草が何だか可愛くて…幸せな気持ちでいっぱいになる。
「ねぇ、土浦君。」
だから、今日はほんの少し勇気を出して……
「うん?どうした?」
「…あのね……」
私の次の言葉を待つ土浦君と目が合った。
「…えっと、あの、『手、を』……」
「『手』?」
「…………なんでもない…」
やっぱり言えない…
『手を繋いで欲しい』なんて。
『将来、恋人が出来たら手を繋いで歩くんだ〜♪』って友達と話して盛り上がったけど、現実でお願いするのにはかなりの勇気が必要で…毎回挫けてしまう。
『今日こそは!』って思ったんだけどな…
「日野?」
土浦君の呼びかけではっと我に返る。
いけない。
自分で勝手に落ち込んでたら土浦君につまらない思いをさせちゃうものね。
顔を上げると心配そうな土浦君の顔。