リクエスト
□一番に言いたくて
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「日野さんっ♪」
朝、学校へと続く坂道を歩いていたら、後ろから聞き慣れた声がした。
振り返るとそこにはいつもの笑顔。
「おはよ、加地君。」
私は何だか可笑しくなって笑ってしまう。
そんな私を見て微笑む加地君。
「ふふっ。おはよう、日野さん。朝から君の笑顔が見れて幸せだな。」
これもいつもの事だけど…慣れない。
「も、もうっ!加地君ったらまた…お世辞言っても何にも出ないよっ!」
これも私が毎回言う台詞。
「お世辞なんかじゃないよ。僕は君が笑ってくれるだけで幸せになれるんだよ?」
微笑みながらそんな恥ずかしい台詞を口にする。
「…………」
聞いてる私の方が恥ずかし過ぎて、言葉が出なくなる。
「ふふっ。可愛いな、日野さん。…そういえば今日は早いね。練習?」
「え?あ、うん。ちょっと弾き込みが足りない所があって。」
最初の方の言葉はあえて聞かなかった事にして返事をする。
するとなぜか加地君の顔がさらに笑顔になった。
「…そう、良かった。なら朝の貴重な時間を少しだけ僕にくれない?」
「え…?何か用事?」
加地君がお願いをするなんて珍しい。
内容は少し気になるけど、加地君だからそんな変な事は言い出さないと思うし…
「時間なら大丈夫だから、いいよ。」
私の返事を聞いた加地君がホッとした顔をしている。
「…良かった。君がOKしてくれなかったらどうしようかと思った。じゃあ、森の広場まで一緒に行こう?」
「何の用事なのか…とかは教えてくれないの?」
一応、ダメ元で聞いてみる。
「う〜ん、それは後のお楽しみって事で…ね?」
最後の「ね?」の所でウィンクされて、思わず赤面する。
……やっぱり慣れない。
「わ、わかったから。森の広場に行こう!ほら、ダッシュ!!」
恥ずかしさを隠す為に走り出す。
そんなのも全部見透かされてるみたい。
顔が見えてなくても、加地君が笑ってるのがわかった。
♯♯♯♯
森の広場に着くと回りには朝早いせいか人がいなかった。
「日野さん早すぎ。追い付けないかと思ったよ。」
「ご、ごめん。」
何か途中で歩くのもおかしな気がして最後まで走り通してしまった。