短編

□月飼い
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月を飼おうと真夜中に
水槽持ち出して
窓辺に置いた





無理矢理、仁王に夜中つきあってもらった
親友の特権ってやつだろうか?





『遠いなぁ……』



ホンモノの【月】に手を伸ばしながら呟いた

無論、届くはずもない



「遠いからえぇんじゃなか?」




うん、遠いよ
ニセモノならこんなに近いのに
ほら、手を伸ばせばニセモノの【月】に
手が届く


だけど
水に映るだけの【月】は
触れると形を崩す


結局手に入らない





「朝までそうしとるつもりかの?」


『んなわけないでしょ
朝は嫌いだし』


「?なんでじゃ?」





朝は嫌いだ
だって【月】が居なくなってしまう

ホンモノもニセモノも



朝になったら私は一人

【月】は私を置いて

誰かの元へ行くんだろう




そう【月】と言う名の【君】よ



その船にちゃんと乗れるのかな?
恋人なんて呼べる立場ではないけれど


最後の愛しい人よ



さぁ、【月】を【空】にかえそうか









窓の外に水を捨てた
月を空にかえした







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