Gift

□るぅ様へ
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『Only one』



バレンタイン。


女の子が好きな男の子にチョコレートを贈る日。


「バレンタインかぁ…カヲル君はたくさんもらえるよね。」

「でも、本当は好きな人からもらえるものが最高なんだろう?」

「そうなんだけどね…。」


向こうにいるアスカをちらりと見たシンジを眺め、カヲルは小さく呟いた。


「本命、か。」





そして迎えた当日。


「カヲル君のいっぱいだねι」

「そうだね。
シンジ君はどう?」

「ミサトさんの義理が――痛っ!」


レイを引き連れたアスカが、シンジの頭をはたいた。


「ほら、ありがたく受け取んなさい!

言っとくけど…義理だからね!」


やたらと義理を強調してシンジに包みを渡すアスカ。


渚にも一応、とシンジより小さい物を机に置かれ、カヲルは少し驚いた。


レイは黙って彼等を眺めていたが、フイと席に戻って行った。


(ファースト…。)


アスカに触発されたのか、私も私も!と女子がカヲルに殺到する騒ぎになり、彼は小さく息を吐いた。





「帰るかい?」

「…ええ。」


ネルフまでカヲルとレイは歩く。



「…フィフスは、たくさんもらったのね。」

「…あんなの、いらないよ。」


足を止めて視線を合わせた二人の髪を、風が揺らす。


「一つで、いい。」


その声音と表情に、レイの鼓動がトクンと鳴った。


「…カヲル。」


少年は目を丸くした後、笑顔になる。


「…!
ありがとう、レイ。」


時折見せるどこか含みのある笑みではなく、年相応のものだった。


「…先に行くわ。」


レイは小箱をカヲルの手に押し付ける様にして、走り出す。


(…渡しちゃった。)


スマートではなかったかもしれないけれど。


任務達成だわ、と彼女は小さく微笑みを浮かべた。





(君のが、欲しい。)



感謝の気持ちを込めて、捧げます。


09*4/29
 

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