Gift
□サイ様へ
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「貴方だけは許さない!」
力の限り戦ったけれど、あと一歩及ばなくて。
「嫌ぁああ!!!」
意識が真っ黒く塗り潰される間際、一瞬バッツの笑顔が浮かんでそして何も分からなくなった。
それからの事はよく覚えていない。
イミテーションを生み出すのに必要だとか、コスモス軍をおびき出すのに打って付けとか、ケフカが言っていた様な気がする。けれど私はもう何も感じる事が出来なくなっていた。
唯一分かるのは、身体を戒める鎖の冷たさと重さだった――
どのくらい時が経ったのだろう。
「――…!」
声が聞こえた気がして、私は瞼を開ける。
「――ナ…っ!!」
ああ、怖い人じゃない。
「ティナっ!!!」
名前も思い出せないその人を見て、空っぽだった心が何かで満たされていく。
「来て、くれたのね。」
彼の瞳に映り込む私は、何故か涙を流して微笑みを作っていた。
「もう、大丈夫だから。」
そう囁いてその人は私を抱き寄せる。
私も同じ様に手を回す。
「…おやすみなさい。」
眠る様に気を失ったティナを抱く腕に力を込めて、俺は囁く。
「ごめん。」
ひとりで辛かったよな。
そっと指先で頬を撫ぜる。
泣きたくなるほどに、その華奢な身体は軽かった。
「…許さねぇ。」
俺の全力を掛けて、倒してやる。
ティナをこんな状態にしやがったあいつを。
(もう、傷付くのは見たくないから。)
相互記念に捧げます。
11*5/4