Gift

□こと様へ
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『年の差はあるけれど』



「わぁ、また増えましたね!」


ポケモン図鑑を操作するイエローが歓声を上げると、レッドも笑みを浮かべる。


「みんなまだ持ってなかったからな。
おかげでボール切れだよ。」

「あははっ。」


ふと、ページを繰っていたイエローの手が止まった。
その視線はあるポケモンにじっと注がれている。


「イエロー?」


レッドが図鑑を覗き込むと、ハッとしてイエローは図鑑を閉じて謝った。


「すみません…!
ありがとうございました。」

「もういいのか?」


図鑑をしまったレッドはチュチュを撫でる彼女をしばらく眺めていたが、何かを思い付いたのか口角を上げる。


「イエロー!
俺と出かけよう。」

「え? は、はい…っ。
おいで、チュチュ。」


麦藁帽子を被ったイエローがレッドの隣りに立つと、彼はボールからリザードンを呼び出してひらりと飛び乗る。


「ほら、俺に掴まって。」

「は、はいっ。」


イエローが掴まったのを確認し、レッドは相棒に告げる。


「タマムシまで頼むぜ。」


任せろ、と咆哮を上げて、リザードンは飛翔した。






「着いたよ。」


レッドの手を借りてリザードンの背から降り立ったイエローは目を丸くする。


「大きな街ですね…!」

「迷子にならないでくれよ?」

「なりませんよ…!
子供扱いしないで下さいっ。」


照れ隠しに口を尖らせて、イエローはレッドが笑って差し出した手を取る。


「はは、そんじゃ行こうか。」


ゲームコーナーに足を運んだレッドはスロットマシンを始める。
イエローはよく分からなかったので、彼がプレイするのを眺めていた。


(まだやるのかな…?)


他の店を覗いてみたいものの、彼の邪魔をしてはいけないという思いから声を掛けるのをためらってしまう。


(…でも、一応言わなくちゃ。)


意を決したイエローが口を開くのと、レッドが振り返ったのは同時だった。


「あ――」
「悪い、イエロー。
ちょっとデパートでも見てきてくれないか?」


言うなり、レッドはスロットに戻ってしまう。


「…っ…デパート、行ってますから…!!」


硬い声で言うと、イエローは店を飛び出した。






デパートの屋上に来たイエローは、ベンチにぼすっと腰掛ける。


「確かに予定は無いけどさ。」


胸がもやもやして、神経が苛立つ。


「せっかくのお出かけなのに…。」


ボールから出たチュチュがイエローを見上げてくる。


「…ごめん。」


微かに笑って、少女はピカチュウの頭を撫でた。




レッドさんの都合も分からないのに、むくれているボクはなんて子供なのだろう。


自分の気持ちも言えていないのに、向こうからなんて虫が良過ぎるよね。




「イエロー!!」


レッドの声に、イエローは顔を上げた。


「…何ですか。」


素っ気無く言えば、少年は気まずそうに視線を泳がせた末に何かを差し出す。


「…ごめん、遅くなって。」


それはモンスターボールで、ポン!と何かが飛び出してくる。


「え…?」


イエローの眼前に浮いていたのは、ポリゴンだった。


「その…スロットの景品だから、ここでしかゲット出来なくてさ……欲しいのかと思ったから…。
機嫌直してくれないか?」



ふ、とイエローの口元が緩んだ。


「そうですね…、レッドさんが一緒にあそこのアイスクリームを食べてくれるなら。」






(まだまだ、子供。)




相互記念に捧げます。



10*12/13
 

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