Couple
□ANIMATION
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「ねえ。ハジは何か欲しいものってある?」
小夜がハジに尋ねる。
「…貴女です。」
「な…っ! ちょ、そうじゃなくて…っ」
小夜は真っ赤になりながらも言葉を続ける。
「他にないの?」
ハジは、少し考えて答える。
「…楽譜を。サーナイト・マーキュリーの光と闇、というものです。」
それを聞いた小夜は瞳を輝かせ、それ、絶対ハジにあげるからねー!と駆け去っていく。
ハジは驚いたものの、ふっと微笑んで彼女を見送った。
「はぁ…。ないなあ…」
何軒か店を周ってみたものの、それは見つからない。
「ハジにお礼したいのに…。」
普段は行かない街まで来たが、やはり見当たらない。
歩き疲れた小夜はベンチに座り、目を閉じた。
「!」
目を開けた時には、青かった空が黄昏に染まっていた。
「寝ちゃったんだ…!」
周りを見渡す小夜の目に何かが映る。
「ん…?」
洋風で看板に五芒星が型抜かれた小ぢんまりとした店だ。
小夜は何かに惹かれるように、その店へ入って行った。
店内は少し薄暗く、ひんやりしている。
古ぼけたペンダント、ピカピカな短剣、古代の文字で書かれた羊皮紙など、骨董品の様な物が所狭しと置いてあった。
小夜は見た事がない笛を眺めていたが、その横にあった何枚かの紙に気付く。
「あ…!」
手に取ると、それはハジの言っていた楽譜だった。
「お姉ちゃん、それ買うの?」
不意に響いた子供の声に、小夜はハッと振り向く。
カウンターにちょこんと腰掛けた少年が、彼女を見つめていた。
「う、うん。」
子供はトンッとそこから降りると、楽譜を手に取りニッコリ笑う。
「見つかってよかったね。」
「うん。」
小夜も笑顔で返す。
「また、来てね。」
気が付くと、小夜は自分の家の前にいた。
「え…?」
手には楽譜がしっかりと握られていた。
次の日、小夜はハジに楽譜を渡した。
いつもの無表情に、柔らかい笑みが浮かぶ。
「ありがとうございます。
では…この曲を貴女に。」
ハジが奏でるチェロの柔らかな音色が、空に響いていった――
(喜んで欲しいから。)
07*12/19
09*3/17 加筆修正