ヘタリア

□戦争と君と僕
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               〜rutovuihi side〜





 (ああ、俺は死ぬのか)




蒼い、青い空
思わず、手を伸ばす


光で紅く染まる、手
「血」に汚れた、手
自分のしてきた事の非道さを考える

今まで自分がしてきたことをされたまでだ



 『自業自得だ』


そう言い捨てて哂うフランツの顔が浮かぶ

「確かにそうだな・・・」

額に手を当てて、哂う
呆れた笑。苦笑い、だ

ふと、バッシュの顔が浮かぶ
怒っている表情(かお)が浮かんだ


(こんなときにも怒った顔しか浮かばないのか)

思わず苦笑がもれる



もっと、笑い合っていればよかった
もっと、触れておけばよかった
もっと、抱きしめていればよかった

後悔しても、もう遅いのだ




俺が死んだら、お前は泣いてくれるだろうか?
 
(お前が泣いてくれるんだったら、このまま死んでもいいな・・・)

自分の捻くれた感情に呆れながらも、そう思った





少しずつ、意識が朦朧としてくる

瞳を閉じる
無駄な抵抗はしない
 死 を受け容れる

(最後にバッシュの顔が見たかった・・・)



そのとき、何所からか蹄の音が響く
その音は、段々と近づいてくる

(敵軍の兵士・・・か?どの道、俺は死ぬ。もう殺されたって同じだ・・・)


もう、すぐそこだ






蹄の音が止む
人の降りる音


(軽い・・・な)



足音が肩の辺りで止まる
そのまま動かない


不思議に思い、ゆっくりと瞼を上げる



 「ルイッ・・・?」



目の前の人影が揺れる
頬に手を添えられる
雫が、頬に落ちた

 
「この・・・馬鹿者がッ・・・・」


泣いている
嗚呼、あのバッシュが


泣いている




「すま・・・なかった・・・」

ルイは、微笑む

「この阿呆が。・・・我輩がどれだけ心配したと」

ありったけの力を振り絞りバッシュを包む



「すまなかった」



小声で呟く




「我輩に気安く触るなと言っただろうが・・・」


声が掠れている声でそう言いながらも、腕の中に大人しく収まった






暫くすると細い腕で俺の体を支え立たせ、いつもの表情に戻る
チラリとこちらを見上げた

「あまり無理をするな」

いつもの声で淡々と

「ああ」

そっけなく会話をしつつも、嬉しかった





俺を助けに来てくれたことも
俺の為に泣いてくれたことも
俺をいつも想ってくれることも
全てが、嬉しかった














(また俺が負ければ、こうやって助けに来るのだろうか?)










ふと、疑問が過ぎる






バッシュの格好を横目で見た
防具も碌に着けずに、剣だけを腰に着けている



(もし、敵に遭遇でもしたら如何するつもりだったのだろうか?
バッシュのことだ、そう簡単には負けはしない。だが、大人数でかかれば・・・)















震えを、覚えた










(俺の・・・為・・・・・・)








その為にこんなに急いでやってきた
ソレは嬉しいことなのだが、バッシュにとってはとても危険な行動となる
もし、バッシュが倒せないような相手が通りすがりでもしたら・・・

考えたくなかった

俺のための行動が、お前を危険に曝すなんて。そんなこと絶対にしたくなかった








「・・・バッシュ」
「何だ?」




足を止めて顔を上げ、こちらを見る瞳を失うなんて考えられなかった





「俺がもし、これから負けるようなことがあっても絶対こんなこと」
「負けなければいいのだろう?」


フイと首を振って歩き出す

確かにそうだ
言っていることは間違いではない




(只、俺に出来るか)

出来るか否か、ではない



今までは、大切な人を守るためなら死んでもいい
そう思っていた
だか、ソレは違う






「大切な人を守るためには、共に生きねばならない。そうだろ?バッシュ」

思わず、口から零れた


バッシュが、僅かに表情を緩める


「判ればいいのだ、馬鹿者が」


つられてルイも表情を緩めた                                














      
                                           
『今、誓おう
 必ずお前を守る
 その為の努力を惜しまない
 二人で、生き抜くために――』
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