捧げモノ・宝物

□ただ、君に逢いたくて
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荘厳な世界
神聖な世界
穢れることのない世界
崩れることのない世界
そして
俺と
俺の
俺たち以外には進入不可侵な
たった二人だけの世界




あの日、あの時俺は世界が壊れてしまえば良いと思った。
兄が親戚を、家族を皆殺しにし、俺だけを残した日。
こんな世界いらないと思った。
滅んで、そして俺さえも消し去ってくれればと、そう思った。
自暴自棄になって、深夜に誰もいない場所で自分を傷つけて、流れる生命の色に安堵して笑って。
世界の終焉を望みながら、自身では死ぬことの出来ない意気地のない自らに嫌悪して、独りの夜を狂いながら過ごした。


そして出逢った、色彩。
月の光を浴びて輝く黒とも緑とも言える髪、鋭い輝きを灯す白銀の瞳。
あの日から世界のあらゆる色を失っていた俺に、鮮やかに植え付けたそれは、俺に気づいてそして笑んだ。
嘲りや皮肉なんて一つも混じっていない、笑み。
思わず伸ばした手にそれは近づいて、掴んだ。
握られた手に伝わる温度と感触。
久しぶりに感じたものだった。

暖かい…

得ることで失うことを知っていたもの。
もう二度と得ることの出来ないものだと思っていたそれ。
感動か、喜びか、悲しみか、恐怖か、どれとも取れるし、どれとも取れない感情の中で頬に涙が伝った。
止まることを知らないかのように流れる涙は、暖かく、冷えた俺の心を温めるように染みた。



「ぁ…」



ゆっくりと伸ばされたもう片方の手にびくりと肩を揺らし、じっと相手を見る。
不器用に、けれど確かな優しさを持って拭われる頬が熱くなる。



「やっと…」



小さく相手が呟いた瞬間、ギュッと抱きしめられた。
震える俺に回る強い腕。
そして届く、言葉。



「やっと、見つけた。」



そぉっと伸ばした俺の手は、迷うことなく相手の背中に回った。
俺も感じたのだ。
目があった瞬間、懐かしさと切なさと、愛しさが。
誰にも抱かなかった思い。



「見つけた、サスケ…」



徐々に霞ゆく視界を悔しく感じながら、けれど耳から聞こえる音で、相手も泣いているのだとわかった。
ギュッと籠もる力に答えるように、俺も力を込めた。

会いたかった。
見つけたかった。
愛したかった。
抱きしめたかった。


ネジを感じたかった。


震える心が枷を外すように溢れて、止まらない。
自分がわからない、わからないけれどネジが愛しいのはわかる。
会いたいと願っていたのはわかる。



「ぁい、たかっ、た…」



零れる嗚咽の中で、絞るようにネジに伝えた。
頬に触れるネジの髪が、少しくすぐったかった。


そして始まる、俺とネジだけの世界。






















有難う御座いました!!
本当に感謝してます。
一生の宝物です!!!

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