いない。いない。
誰もいない。
「はぁ…、はぁっ…はぁ!」
走っても、走っても。
どこに行っても。
自分以外に、誰もいない。
「いっ…た…」
転んで擦り剥いてしまった膝から、血が滲み出す。
綱吉の瞳からも、涙が滲み出していた。
「綱吉クンみーーっけ♪」
ハラハラと。
空から光と共に舞い落ちてくる、白い羽根。
「つまんないなぁ。ねぇ、もう鬼ごっこは終わりー?」
それは綱吉の前に降り立つと、顔を覗き込んでくる。
満面の笑みで。
天使のようだなんて、笑ってしまう。
「折角、わざわざ逃がしてあげたのに」
紛れもなく、ただの悪魔だというのに。
鎖の先でぱっくりと口を開けている首輪を揺らしながら、白蘭が声を上げて笑う。
今朝まで己を締め付けていたそれを思い出し、綱吉は首の傷を擦って息を飲んだ。
もう、戻りたくない。
だけどどこにも、逃げられない。
「なーに?もう逃げないの?じゃあ捕まえちゃうよ?綱吉クン」
「あ…っ…」
少しずつ、伸ばされてくる腕。
体が震える。
声が出ない。
「今日はどんなお仕置きしてあげようか。とりあえず、その可愛いお尻をいっぱい叩いて美味しそうな真っ赤にしちゃおう♪」
指が触れる直前。
瞼が開かれて、冷え切った紫色に見つめられた。
「…綱吉クンの泣き叫ぶ声が出なくなるまで」
寒気がする。
吐き気がする。
綱吉に残されている選択肢などない。
痛む膝を我慢して。
綱吉は再び走り出していた。
何をしたって無駄なことなど、最初からわかっていても。
「そうそう。もっといーっぱい逃げ回って、僕を楽しませてね」
小さくなっていく綱吉の背中を眺めながら、白蘭は悠々と呟く。
首輪に口付けを落としながら。
「どうせ、この世界には僕達二人しかいないんだから」
時間など、腐るほどにある。
二人だけのこの素晴らしい世界で、永遠に遊び続けよう。
白蘭様の世界創造編。
つなちゃん超可哀想。
でも白蘭様なら飽きることなく永遠につなちゃんと遊んでくれると思う!
それでつなちゃんが従順になったらちゃんと愛してくれる!…と思う。