ゾロル

□愛相傘-aiai/kasa-
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帰り際、部活で遅くなったゾロは、
初めて心臓の『ドクン』なんて高鳴る音を聞いた。

ほとんどの生徒が帰り、静まり返った昇降口。
雨の音がサーと心地よい音色を奏でている。

少年は、雨を目の前にして微動だにせず、
じっとこちらに背を向けていた。

「ルフィ?」
ゴクリと生唾を飲み込む。

幼馴染で、小さい頃からずっと一緒にいた。
なのに、いつからだろうか。あまり会話をしなくなっていた。
ルフィは人気者で、必ず誰かが彼の周りを取巻いていたし、
ゾロも部活で忙しいのと、その無口な性格が相まって、
遠巻きに周囲から見られがちになっていた。
高校にも上がれば、ルフィとゾロが幼馴染だと知る者もほとんどいなくなっていた。

「ルフィ・・・」

靴を履き、背後からそっと呼びかける。
小さな肩がビクリと震えるのをゾロは見逃さなかった。

「・・・ゾロ・・・。久しぶり。
・・・っても、毎日いちお会ってっか」
不器用に笑って見せるルフィ。
いつの間にか遠くなっていたんだな、こんなにも。

でも、もう戻れない。
だって、俺はルフィを友達としてではなく、
好きだから。

戻るということは、友達になるということ。
友達として近くにいることなんて辛すぎて、もうできない。
だから、離れようと決めた。

好きだから。


「傘、ねぇのか」
「ん・・・あ、あぁ。忘れちまったみてぇだ。
ゾロ、持ってねぇか?」
「・・・貸してやる。使え」

自分の傘を差し出すと、戸惑うような瞳でルフィが見上げてくる。

そんな顔で俺を見ないでくれ。

思わず視線を逸らしたゾロに倣うかのようにして、
ルフィも俯いた。

「お、俺は先走って帰るから」

沈黙に耐えられなくなったのはゾロ。
傘をルフィに握らせて、走り出そうとした。

「!!!」

「・・・すまん、ゾロ、待ってくれ・・・・。
お願いだから、待ってくれ」

ルフィの細い指が、震える程強くゾロの腕を掴んでいた。

「ルフィ・・・?」

触れたところから、ルフィの温度が伝わってくる。
微かに震えるルフィの手は、
幼い頃よりもほんの少し大きくなっただけで。

「一緒に・・・帰りたい・・・」

俯いて呟くルフィは、泣いているかのようだった。

「分かった・・・。
分かったから・・・」

ルフィの手から力が抜けるのを感じた。
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