サンル

□でんでんむし
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新しい島に着いて3日が経った。
その間、サンジと会えていない。

『買出しに行ってくるから』
そう言い残し、そのまま消えてしまった。
一つだけ忘れ物をして・・・。

「ルフィ、何でそんなコデンデンムシばっか見てんだ?」
手首につけたままのコデンデンムシを見て、
ゾロが声をかけてきた。

「なんか、サンジが付けろってゆってたから、
付けてんだけど、あれから帰ってこねぇし・・・。
なんか・・・コイツがサンジに見えてきて・・・」

(ノ・・・ノロケかぁ・・・・?)
ほんの少しイラつくゾロをよそに、
体操座りのまま小さくなって、ルフィはコデンデンムシから目を離さない。

「何かあったんかなぁ?」
「んなわけねぇだろ。アイツに限って」
あのルフィ命みたいなエロコックが、ルフィを残して簡単に消えるわけがない。

ルフィは知らないが、
誰もがサンジのルフィに対する恐ろしいまでの執着を知っていた。
皆、ルフィを愛しく思っているが、サンジがいないからといってチャンスだと思えない。
むしろ、いつどこから見ているのか分からないため、
怖くてなかなかルフィには近づけないのだ。

「そうだよなっ。ハハッ・・・あれ・・・?」
今まで我慢していた涙が溢れ出す。

大きな瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれるのを見て、
ゾロは思わずその小さな身体を引き寄せ、抱きしめた。

「ぞ・・・ぞろ?」
「黙ってろ・・。その・・・・泣き止むまでは傍にいてやるから・・・」
「サンキュ・・・ぞろ・・・」
ルフィの腕がゾロの逞しい背中に回される。

(やっべぇぞ・・・これは・・・んなっ!!???)
ルフィの感触に一瞬下心に火が点きそうになった瞬間、
背中に嫌な視線を感じ、慌てて首だけで振り返った。

「?」
誰もいない。
だが、恐ろしい程の悪寒は未だに続いている。

ビリビリビリビリ・・・・

背中が痛い・・・。
激痛とまではいかないが、長時間受けていると、
激痛へと変化しそうだ。

原因は分かっている。
あのエロコックだ。
だが、気配はしない。
なのに、何だ、この悪寒は。

「サンキュ、ゾロ。お前がいてくれてホント良かったよ」
そっと、ゾロの逞しい腕からルフィが離れた途端、
背中の悪寒がキレイサッパリ消え去る。

「そ、そうか。本当にもういいのか?・・・ふぐっ・・・」
「ゾロ?フグ?」

離れようとするルフィの腕を試しに掴んでみた瞬間に、
明らかな背中への悪寒。
思わず、叫んでしまったゾロをルフィの未だ潤んだ瞳が見上げる。

「何でもねぇ。とにかく、あのエロコックは大丈夫に決まってる。
おめぇだって、アイツの事信じてんだろうが。
船長なら胸張って待ってろ!」
「お、おう!!」
右腕とも言えるゾロから力強く言われると、
今までの自分の不安は一体何だったのかと、
あまりにも小さな事に悩んでいたんだと思い知らされる。




でも・・・

「やっぱ会いてぇよ・・・サンジ・・・」
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