valentine〜ゼロスの場合〜
赤く長い髪の毛が首を傾けると一緒にサラリ、と動く。
ピンクの服に赤い髪。
ゼロスは端から見ても分かるように悩んでいた。
近々迫りつつあるバレンタイン、なる行事だ。
バレンタインには女の子がチョコと共に想いを打ち明ける。
それ自体は素晴らしい行事だと思う。
うんうん、ハニー達がより可愛くなるいい行事だよな。バレンタイン万歳。
ってな具合である。
だけれども問題が一つ。
ゼロスはチョコ食えない。
ものすごく駄目、というわけではないが、量をこなすとやっぱり気持ち悪くなる。
チョコというよりかは、甘いもの全体的にいえるのかもしれない。
だから、困る。
普段ならば、悪いチョコはいらないぜ、と言える。
俺様が欲しいのはお嬢さんの笑顔、なーんて!と言いながら笑って言える。
だけども、もしもあの彼女が持ってきてくれたら。
食べるのが大好きな彼女が、我慢して頑張って用意してくれたのが分かるだけに、迂闊に言えないし、何より言いたくない。
第一もしも、億分の一、ありえないことだけども断ったとして。
それがどうなるかを考えると癪だ。
誰か他の人にやらないよな?
俺様のために用意してくれたのに?
でもチョコはあんまり食べられない。
「バレンタインは俺様、チョコ以外で頼むぜ〜」
口に出して言ってみる。
「……かっこわりぃ」
しかも貰えることを前提に言っている。
そこで「え?」みたいな顔をされたらちょっと立ち直れない。
ーーーーーバレンタイン当日までゼロスの悩みは尽きそうにない。