* いろいろ *
□ * きみとキスを *
2ページ/2ページ
【キミとキスを】
1.午前ゼロ時に、きみとキスを
ぼんやりと目覚めた俺を、お前は心底驚いた、という顔でまじまじと見た。
「…どないしたん?」
「……いや、解んねぇけど」
俺は寝つきが良い方で、一度寝たら滅多に起きない上に、安眠妨害が大嫌い(非常時は別だけど)。
だから寝付いた俺をお前が起こす事はなく、結果、夜中に目を覚ます事はそうはない。
なのにどうしてこんな時間に目を覚ましてしまったんだろう…。
そう困惑する俺の耳に、市丸の笑いを含んだ声が届く。
「なァ、」
顔を上げると、月明かりと行灯を頼りに捲っていた本をぱたん、と閉じた市丸が、布団の中起こしていた身体を肩まで潜らせ、コロンと横臥したところだった。
枕の上に頭を乗せた向かい合わせの体勢で、細い目が楽しそうに俺を見つめ――つん、と冷たい指が眉間を小突く。
「起きた途端に、もう難しい顔してはるよ?」
「え…」
市丸の指が当たった場所に手を伸ばすと、確かにくっきりと二本の線。
枕元の時計の針に無意識に眉根を寄せていたらしく、俺はバツの悪さを隠すようにぐいぐいそれを手で擦った。
「…ホラ、赤くなってまうやん」
俺の手首を軽く掴み、やんわりとたしなめた市丸は、身体を少しこちらにずらす。
そのままもう一方の手も布団から伸ばし、寝起きのせいだけじゃない、熱い頬を両の手のひらで包みこんだ。
そしてひんやりとした気持ち良さに、自然息を吐いた俺の額に近付いて、
「もっかぃ眠り?」
吐息が掛かる距離で、そっと笑った。
伸ばし途中の眉間の皺へ。
お前から、午前0時の甘い口付け。
-オワリ-
たまには甘くてもいいじゃないか!(笑)
ちなみに安眠妨害にキレるのは私です(笑)
2009/1/12 ユキ☆
.