* いろいろ *

□ * 50-50 *
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「ボク、日番谷さんのこと好きになってしもうたみたい」




突然の告白に、乱菊はまとめていた書類の束を床に落としそうになった。


「…あ、あんた本気で言ってんの……?」

寸での所で落下を防いだ書類を抱えつつ問いかければ、表情を変えずに頷く男。


「当たり前やん。乱菊に冗談でこないなこと言うほど、酔狂やないよ、ボク」

目も声もいつもと一緒。爆弾発言を飛ばしたとは思えない表情に、乱菊は小さく頷いた。



でも、この雰囲気は、本気の時。自分には解る。


僅かとは言え、幼い時を共に過ごし、再会してからも自分が一番側で見てきたのだから。



乱菊は、自席に座り、置きっ放しになっていた湯飲みを取ると、口に運ぶ。

僅かに残っていたぬるい茶が喉を通り、長く引っ掛かっていた言葉を、胃の中に押しやった。




解っていた。自分とギンの関係は、これ以上進みはしないと。


互いに本気の相手などいない。だからたまに身体を重ね、欲を貪り合うだけの関係。



だからお互い、理解していたの。

どちらかに本気の相手が出来たら、それでお終いって。


きちんと取り決めたわけではない、暗黙の了解。でも、あたし達の間にはそんなもの必要なかった。



だから、そうね。


これは恋ではない。



正しい道に戻るだけ。だから寂しくなんかない。



「…隊長を泣かせたら、容赦しないわ」

声は震えなかった。笑顔すら浮かべられた。




恋ではないから、強くいられる。



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