* 短編小説A *
□ギンヒツ長文@ 出会い編
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そもそもボクは、何にでも興味を持つタチなんや。
珍しいなぁと思ったら側に寄りたなるし、面白いなぁと思ったらちょっかい出してみとうなる。
ただそれがあんま持たへんもんやから、みんなボクん事を「変わりモン」やら「だらしない」やら言うんやけど…。
“興味”なんてそんなもんやろ?
ちょんとつついて面白くなかったらお終いや。
それにそんな気ぃ引くことがそう簡単に転がっとるわけあらへんし。
せやからボクは、いつも何かを探しとる。
「なーんぞ面白いコトないやろか…」
思考が口をついて出れば、斜め前を歩いていた上司がくすりと笑った。
「ギンが退屈なのは良いことだよ」
人好きのする柔らかい笑みを浮かべたまま、長身の男はそう言ってゆったりと足を進めて行く。
己の言葉に、むぅ、と口をへの字に曲げた副官をまるで無視して歩く背には、白地に黒の『五』がひとつ。
五番隊隊長 藍染惣右介。
自分にとって唯一の上官を横目で見つつ、市丸は肩を竦めて小さく笑った。
(傍からは“人格者の隊長が不真面目な副隊長を戒めとる”ようにしか見えへんやろなァ)
本当は、そんなこと言っているこの人が一番退屈しているのに。
的を外していないだろう考えが可笑しくて、市丸は浮かべた笑みを深くした。
穏やかな笑顔と優雅な身のこなしに、多くの人は騙されるけど。
自分は知っている。この人の抱える深い闇を。
まだ自分が流魂街にいた子供の頃、既に死神だったこの人は、自分と、そうとは知らないけれど、当時共に暮らしていた乱菊を養ってくれていた。
到底平和とは言えない地区に落とされれば、子供だって人の心を読むようになる。
…いや、むしろ弱いが故に、そうでなければ生きていくことも出来ないのだ。
だからかもしれない。声を掛けられたその時に、優しげな表情は仮面であると気がついた。
親切心で自分達を保護するのではなく、その何かに自分を組み込む為だってことも。
それでも、市丸は構わなかった。
藍染は、生きていく為に必要なものをくれる人。
退屈な世界に、唯一何かをもたらす可能性を秘めた人。
それを見返りに、言われるままに死神にもなったし、副隊長にまで上り詰めた。
――だけど、もっと面白いことを見つけたら、その先に付き合うかどうかはまた別だ。
互いに口には出さないけれど、自分達の関係は信頼の上に成り立っているものではないのだから。
その頃からかもしれない。
藍染が笑顔に身を潜めるように、市丸もまた狐面の下に素顔を隠す術を身に付けたのは。
それはまるで、全てを許している訳ではない。と互いに警戒しているようだと市丸は思う。
(でもなんでこのお人やと微笑で、ボクやと裏がありそうに思われるんやろ)
こーんなに優しいのにな?
にんまりと(本人的にはにっこりと)笑みを浮かべる市丸の斜め後ろに居た三席が、その機嫌の良さに恐怖を覚え密かに震え上がっていた…。