* 短編小説 *

□ * 『愛』という名の戯れ *
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己の中で何かが動く

血を好み破壊を楽しむモノ

更木とは違う、殺戮を悦ぶ心




それに気ぃ付いたんは、そんな昔やない。


でも、日常などどうでも良えし、人の命もどうでも良ぇんよ。

そやさかいにだんだん大きくなる衝動を、とめようとも思わへん。




どうしょもなくなったら、そこら中の死神を斬って出て行ったらええわ。


あぁ…、それはえらく面白そうや。

目に付くものを斬って。

追っ手と遊ぶ。


そんな日々も楽しそうやね。




でも、今はまだその時やない。

自分にとって、唯一大切と言える幼馴染が悲しむ事は、まだしとうないと思っとる。


せやから毎日確認する。抱きしめて何の感慨も浮かばなくなったら。



彼女から斬り捨てよう。







…だけど、そろそろ、終いにしよか。


「飽きてもうたわ」

「何よソレ」



窓際の本棚から書類を引き抜いていた幼馴染を、背後からそっと抱きしめる。



ちょっと、と咎めながらも慣れた行為に、乱菊は振り払うことをしない。

首周りに巻きついた腕が邪魔なのか、彼女は腕の中で身じろいた。


しかしそれを許さず、細い顎を背後から掴み上げると、強引に後ろを向かせ、目を合わせた。


その日頃とは違う乱暴な行為に、乱菊は目を見張る。

「・・・あんた」



なるべく優しく笑ってあげる。

死に逝くもんへの手向けやからな。



「ん?」

「目が……紅い、わ」


そらアカン

見られてもうた



首に回していたもう一方の手を、細い腰に回し、下げられていた腕をも掴む。

蛇のように拘束して、身動きの出来ない相手に安らぎの口付けをーー。







「何をしている」



背後からかかった冷たい声に、触れる手前で唇を止めた。



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