* 短編小説 *
□ * 帰る場所 〜まじない *
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現世任務に出ていた十番隊を迎え入れる為、穿界門が開かれる。
隊長の日番谷を先頭に、十数人の一団が住みなれた尺魂界へ足を踏み入れ、皆一様にほっとした顔を浮かべた。
緑豊かな尺魂界。戦いに身を置く彼らの安息の地。
表情こそいつも通りだが、日番谷も内心再びこの地を踏めたことに安堵する。
今回も誰一人掛けることなく戻って来ることが出来た。
多少の怪我は予想の範囲内。四番隊の世話にはなるが、大事に至らなくて良かった。
「隊長…」
息をついた日番谷の背後から、小さな声が掛かる。
ん?と降り返れば、泣き出しそうな部下の姿。
「本当に…申し訳ありませんでした…!」
直角になる程深く頭を垂れる部下に、日番谷はいつも通りの笑みを浮かべる。
「あぁ。次は気を付けろよ」
はい!と返事を返し、再び頭を下げる。その沈痛な表情に、日番谷はちらりと後ろに控える席官の顔を見て、隊舎へと歩き始める。
その無言の合図に、彼らはうな垂れる1人の頭を叩いたり、肩を組んだりと、労い発破を掛ける。それを受けながら、彼は泣きそうな笑みを浮かべた。
護廷十三隊は一隊辺り200人以上の大所帯。スムーズに運行する為には、結束を固めることが必要だと日番谷は考える。
個々の能力にのみ頼らず、互いにフォローし合う。そして失敗を自分自身で見つめて己を磨く。
助け合いは決して馴れ合いではない。互いを高め合うことに繋がるのだ、と。
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